時代を感じさせるデザインが印象的な上田映劇
駅前通りから横筋に入り、
少しくたびれた路地を歩いたところにそれはあります。
見知らぬまちでいきなりタイムスリップしたかのような
錯覚を覚えるほど、リアリティのある存在感です。
建物の古さから、閉館した映画館かと思いきや
壁に貼られたポスターを見ると、なんと現役で使われていました!
レンガ色タイルの丸柱に「上田映劇」の金文字、
そのデザインとリアルな素材感に長い時間が凝縮されています。
見上げるとアールデコ調のかまぼこ型に膨らんだ壁が連続し
これまた年季の入ったローマ字のロゴには凄みが感じられます。
昭和期には映画館として全盛期を迎えたそうです。
玄関正面の腰壁にはオリジナルの黄土色のタイルが貼られ
上部の緑色の壁とのコンポジションが味わい深いです。
こちらは切符売り場
ひとつひとつのパーツが時間的に調和しながら
凍結保存された文化財とは違う体温が感じられます。
この映画館は平成に入ると大手シネコンなどにおされ
一度は閉館に追い込まれたそうです。
それでも、映画を愛する有志によって復活、
瀕死の状態から息を吹き返したのです。
映画館は、まちの文化レベルを測るバロメーターです。
復活にあたり、映画館の存在は
人々に大きなインセンティブを与えたことでしょう。
建築は、自身の持つデザインの力によって
まちの文化を熟成させるために大切な役割を担っています。