石柱庵
category: tea room
location: 山口県周南市
site area: 257m²
floor area: 36m²
completion: 2015.3
大津島に残る日本の原風景のようなガマの群生地、その畔にある農業用倉庫の廃屋を改修して茶室に見立て、風景と一体となって交流できる場を構築。原風景を過去への郷愁として単に保存するのではなく、活きている場として体感できるような契機を与えている。
人の背丈を超えるほどのガマが広がる湿地に対し、改修した倉庫の屋根だけがその上に浮かび上がるように関係付け、一体感のある風景になるよう工夫している。廃屋の柱は御影石で、大阪城の石垣にも使われたこの島の特産である。朽ち果てて屋根が抜け落ちた倉庫の中に、柱が遺跡のように立っていた。この柱に命を吹き込み、島の個性をあぶり出す存在と位置づけた。改修で加えた素材には島にあるもの、既存の倉庫と同じ時間を刻んだものを可能な限り使用。一方で、露地や立礼卓には現代的な表現を加え、単なる復元とは違う、時間的な奥行の感じられる空間としている。
場を活性化するための触媒としてしつらえた「茶室」は、茶会の空間にとどまらず、広い意味でのコミュニケーション空間とし、アートギャラリーや文化的なイベントにも使えるような柔軟性を持たせている。
(2015年グッドデザイン賞受賞)