ヘリテージマネージャー養成講座6

HM養成講座、宇部編
山口大学感性デザイン工学科の内田文雄先生に
「建築が生き続けるということ」というテーマで講演いただきました。
 
 
 
 
 
人口減少に伴う空き家の増加、公共施設の老朽化など
建築を取り巻く様々な問題が浮かび上がる中
質の高い建物を後世に伝え残していくことが課題になっています。
 
建物はまちや人の歴史や記憶を繋いでいく貴重な存在です。
しかし、使われなくなった建物をただ単に保存するには大きなコストを伴います。
そのため、建物を生かし続けて残していく方策が必要になります。
 
講演では、内田先生の実践をもとに
生き続ける建築について、貴重なお話をいただきました。
 
 
 
 
 
講演の後、
重要文化財となった渡辺翁記念館など、建築家、村野藤吾の作品を視察。
 
 
 
 
 
エントランス脇の壁には炭鉱で発展した宇部を象徴する
炭鉱労働者のレリーフが刻まれています。
 
 レトロな雰囲気のエントランスは
映画「ALWAYS 続・三丁目の夕日」のロケにも使われました。
 
 
 
 
 
ロビーから2階天井を見上げたところ
手すり壁、柱、天井の照明形状など
力強さの中にも優美な表情も併せ持つ意匠にまとめられています。
 
 
 
 
 
階段ホール吹抜けのガラスブロック
改修時に新しいものに変わっていますが
複雑な形状が光を乱反射させながらドラマチックに広がっています。
 
 
 
 
 
2階ホワイエの列柱空間
茶色の大理石と磨き込まれたチェック模様の床が華やかです。
 
 
 
 
 
ホール内部を舞台から臨んだところ
村野特有の優美な曲線が多用された空間は、音響的にもすぐれています。
 
 
 
 
 
ホール背面、円弧壁の連続
舞台からの音をこちらで拡散させる効果を意匠とバランスさせています。
 
 
 
 
 
天井の造形とライティング、間接光が優美で美しい。
 
 
 
 
 
照明器具も村野によるオリジナルデザイン
一つ一つ丹念にデザインされています。
 
 
 
 
 
貴賓室の床
4色の人研ぎ仕上げに大理石がはめ込まれたコンポジション
 
村野は随所に装飾的な意匠を施していますが
そこには、建築は合理性だけでなく、人の心に響くものでなければならない
という彼の哲学が深く刻み込まれているように思います。
 
 
 
 
 
回り階段、巾木端部のディテール(丸く盛り上がっている部分)
ほとんど人が気づかないような箇所も
細心の注意を払ってデザインされています。
 
 
全体の空間構成から細部の意匠に至るまで
ひとつとして手を抜くことなく、デザインされたこの建物。
奇跡的に戦災を免れ、その後も市民に愛されながら現役であり続け
これからも長く長く生き続けていくことでしょう。
 

生野屋の家、床暖房工事

アトリエに設置された床暖房のパネル
 
1日のうちで最も長い時間を過ごすアトリエ。
天井も高く、空間も大きいため、冬の寒さに備えて床暖房を設置。
できる限り、絵画製作に集中できる室内環境を目指します。
 
 
 
 
 
外回りでは、外壁の波板の施工が始まっています。
屋根との取り合いもできるだけ簡潔にまとめて
無駄のないすっきりとした納まりにしています。
 
 

大津島ミーティング、島麦酒とともに

内田鋼一さんを囲んでのミーティング。
今回もお忙しい中、周南まで足を運んでくださり
秋に向けて、イベントの構想などを話し合いました。
 
 
 
 
会席では今年完成した島麦酒をみんなで賞味。
 
大津島のスダイダイを使った地ビールで
メンバーの松田翔剛さんがプロデュース、ラベルデザインを行ったものです。
 
味はやや濃厚でスダイダイの酸味と淡い苦味がマッチしていて
ベルギービールのように風味を楽しみながら飲みたい逸品です。
 
 

ヘリテージマネージャー養成講座5

HM養成講座、今回は岩国の城下町の取組みを学びました。
 
岩国城は、関ヶ原の合戦以後、毛利氏の国境の守りとして
江戸時代には珍しく山城としてつくられました。
 
しかし、岩国城下の平地が狭いため、
錦川を挟んだ対岸に城下町が整備されました。
 
そして、家臣が錦川を渡って城に通うために錦帯橋がつくられた
など、その成り立ちを初めて知ることができました。
 
 
 
 
 
 
城下町は現在も江戸時代の町割りがあまり崩れることなく残っており
歴史上の町割りの中に、旧家も数多く存在しています。
 
 
 
 
今回、講義ののちに旧家の実測調査の実習を行いました。
5、6人のグループごとに、手分けして建物の各寸法を記録していきます。
 
 
 
 
外部につづき、室内の寸法も計測していきます。
メジャーで長い建物の両端を固定する係、途中の寸法を測る係、
寸法を図面に記入する係など、手分けをして測っていきます。
 
 
 
 
寸法を測りながら、この家の特徴となる意匠や空間もチェック。
この家には、隣家との間に立派な火袋がつくられていました。
 
火袋は、
かまどのある吹抜けの空間で炊事による熱気や煙を上部に逃がし、
火事が起こった際にはこの空間に火を閉じ込めて延焼を防ぐという
古人の知恵が詰まった日本建築固有の空間です。
 
京都の町家にはよく見られるものですが
この岩国のまちの中にその知恵が受け継がれているのは
とても興味深くもあります。
 
 
 
 
実測が終わり、間取りと各寸法を書き出したもの。
(山根建築設計事務所の山根さん作図)
 
 
 
 
こちらは2階に上がる箱階段を図にしたもの
(金子工務店の金子さん作)
いずれも力作です!
 
 
実際に改修を行う際もこのような実測を行い
建物の全容を明らかにすることが求められます。
 
新築に比べて、目に見えない手間がかかりますが
現代ではつくれない価値を将来に受け継ぐための大切な仕事です。
 
 
 
 
今回実測調査に協力いただいた中川家と中川さん。
古くからの家を現在まで大切に守っておられます。
 
HM講座では、この価値を未来にどう活かすか
その活用方法についての模索も学んでいきます。
 
 

生野屋の家、屋根工事

天候不順で延び延びになっていた屋根工事が始まりました。
 
 
 
 
屋根はガルバリウム鋼板の立平葺き。
幅39センチの長尺板を横方向にジョイントして一枚の屋根に仕上げます。
 
 
 
 
 
最近は、ジョイントの重ねが施工しやすい既製品もあります。
仕上がりもシャープですが、見た目がやや味にかけるのが難点のため
TIMEでは、手仕事の跡が残る、昔からのやり方でお願いしています。
 
それにしても
氷点下に近い寒さにもかかわらず、職人さん、素手です!
 
一箇所一箇所かしめていく作業はほとんど筋トレ、
それでも笑顔で答えながら淡々と仕事を進めていきます。
ほんと、頭が下がります。
 
 
 
 

何気ない風景@駅前図書館

床に浮かび上がったチェック模様
 
2月3日にオープンした話題の周南市立駅前図書館、
建築目線で見つけたささやかな風景です。
 
影を落としているのは手すりの竪格子。
細い角鋼をわざわざダブルに組んだ手の込んだつくりです。
 
建築好きでなければまず気がつかない細工ですが
照明効果によって思いがけず、作者の思いが現れました。
 
 
 

駅前図書館、内覧会レポート3

再び2階へ、1階から続く吹き抜け空間
この図書館デザインの目玉である巨大な本棚です。
 
 
 
 
 
本棚には背表紙にまち並みが描かれたオブジェが飾られています。
2階の壁画とともに、
周南あけぼの園の徳原望さんが描いてくれたものだそうです。
 
 
 
 
 
吹き抜けの大階段を降りて1階へ
 
 
 
 
1階にはツタヤ書店のマガジンストリートが広がっていて
天井も高くゆったりとくつろげる空間です。
 
 
 
 
スターバックスコーヒー
12月からトレーニングしてきたというスタッフ、
周南のサードプレイスを目指して、がんばって下さい!
 
 
 
 
コーヒーのある心地よい時間、
そして気軽に文化に親しむことのできる市民の居場所
 
平成24年から何度も何度も議論を積み重ねた結果として生まれた交流施設が
ようやくオープンします。
 
新たな図書館建設には様々な意見があり、まだ賛否も別れています。
民間の運営を心配する声もあり、多少のトラブルもあるかもしれません。
足りないものも、あげればきりがないでしょう。
 
しかし、
まちに「市民の居場所を生み出す」という使命はひとまず、達成できそうです。
 
けれど、
大事なのはむしろこれからです。
 
この場所は行政やツタヤが与えてくれた場所ではなく、
市民みんなでつくっていく場所にならなければ意味がありません。
 
 クレームや愚痴を並べるより、ポジティブな行動こそが
周南のまちを豊かにしてくれることを忘れないでほしいと思います。
 
 
 

駅前図書館、内覧会レポート2

 
図書館3階の閲覧コーナー
 
カフェのような雰囲気の心地よい空間、
学生や若者たちのたまり場になること、必至ですね。
 
 
 
 
南側、窓越しに線路が見えるカウンター
 
ここで本を読んでいるとドクターイエローに出会えるかも。
電車好きにはたまらない場所かもしれませんね。
 
 
 
 
 
 
駅前広場へ開放された場所には、デザインされた椅子とテーブル。
ここから眺める風景も今後、センスよく進化してほしいですね。
 
 
 
 
 
交流室(写真奥)に近い東側の閲覧コーナー
 
机や椅子はそれぞれの場所で違うデザインにしてあり
市民が自分の好みで選べるように、いろんな居場所が用意されています。
 
 
 
 
閲覧コーナー奥の交流室2
60席の比較的大きなスペース、全面ガラスで開放感抜群です。
 
オープニングイベントとなる山崎まさよしのミニライブ、
藻谷浩介や内藤廣の講演会もこちらで行われるようです。
 
 
 
 
 
 
南北自由通路をはさんだ東側(南銀座商店街側)にある交流室1
中規模のこちらの部屋も開放感があって、気持ちよさそうです。
 
 
 
 
 
2階東側のキッズライブラリー
独立したこのスペースは子供達が楽しめるような造りになっていて
長い時間のびのびと過ごせそうです。
 
 
 
 
 
靴を脱いでくつろげるコーナー
 
 
 
 
キッズライブラリー専用のトイレ
オムツ替え用の台も常備されています。
 
 
 
 
駅前広場2階のオープンデッキ
 
まだ駅前広場の工事が続くため、今はちょっと殺風景です。
それだけに、椅子やテーブルに加えて緑の潤いがほしいですね。
 
 

駅前図書館、内覧会レポート1

明日オープンを迎える周南市立駅前図書館、
関係者用の開かれた内覧会に行ってきました。
 
 
 
 
 
まずは2階の南北自由通路からアプローチ
入ってすぐのところにあるのがツタヤ書店、書籍や雑貨などが販売されています。
 
 
 
 
 
真ん中には、いま話題の本たちが平積みにされています。
 
 
 
 
こちらは食や料理に関する本と関連グッズたち。
駅前図書館は、ライフスタイル関連のジャンルの充実が特徴です。
 
 
 
 
 
棚には様々な食品もディスプレイされていて
料理の本を参考にして、買い求めることもできます。
 
 
 
 
日本酒に関する本のコーナーもありました。
 
 
 
 
カウンター横には実際に日本酒が売られています。
 
公共施設でお酒を売っているというのも珍しい光景です。
規制緩和というお固い言葉のイメージではなく、
今の時代にふさわしい人間らしいくらしへの対応と受け取ればいいんじゃないですか。
 
 
 
 
入口すぐには周南市産品の特設コーナーも。
(観光案内所の機能がないのがこれからの課題です)
 
 
 
 
 
ツタヤ書店を抜けるとその奥が図書館につながっています。
こちらにもライフスタイルや旅行、デザイン関連の本が充実しています。
 
 
 
 
ツタヤ書店と図書館の間には明確な区切りがないため
かろうじて床に区分けが示されています。
 
行政の感覚ではなかなか手を出しにくいやり方ですが
これも民間の運営だからこそできたことでしょう。
 
将来、このサインすらなくなって
より自由で自立した時代がくることを願います。
 
 
 
 
 
図書館奥にはサービスカウンターがあり、
様々なサービスを行うスタッフたちがスタンバイしています。
 
 
 
 
 
駅前広場側は開放的な全面ガラスで
ドリンクホルダー付のベンチが設えてあります。
 
 
 
 
入口には車椅子やベビーカーも用意されて
ハンディキャップへの配慮がなされています。
 
 
 
 

生野屋の家、天窓

生野屋の家、天窓の設置が完了しました。
 
キッチン部分の採光と換気のため、着工後に追加したものです。
キッチン背面の壁は収納重視で窓を設けていないため
思案の末、天窓で対応することになりました。
 
 
今回はガスコンロのため
中間期から夏場にかけてエアコンを使わない日など、
火を使う調理中は暑さを和らげるのに大いに働いてくれそうです。
 
 
 
室内から見ると、明るさが一目瞭然、
昼間はほぼ照明いらずです。
 
さらに、電動開閉でしっかり換気もしてくれます。(もちろん網戸付)
雨が降れば、センサーで自動閉鎖してくれる優れものです。