山口県ヘリテージマネージャー協議会の総会が土曜日に行われ
そのあとに開催地の防府のまち歩きが行われました。
まずは、種田山頭火の生家があった地区にある
山頭火の小径と呼ばれる路地づたいにスタート。
戦前から残る細い小径は車が通らず穏やかで、水路には清流が流れ
ところどころに歴史的な建築要素も残っています。
小径から旧山陽道に出てくると見えてきたのが
板塀と漆喰塗りの蔵が印象的な白石呉服店。
歴史は古く、明和2年(1765年)までたどるそうで
その歴史もさることながら、現在まで大切に維持されている建物と景観は
本当に立派というより他ありません。
板塀のすぐ脇にはやはり清流が流れる水路があり
蔵の屋根にある扇状の棟飾りの意匠もなかなか個性的なデザインです。
これらすべてが調和して、この場所の景観を引き締め、街並みに貢献しています。
旧山陽道には明治以降の洋館も残っています。
戦前は、この通りが防府の中心だったことをうかがわせる貴重な遺産です。
区画整理で通りの電線は地中化、舗装もきれいに整備されていますが
車の往来を気にしながらのまち歩きはやや残念です。
できれば、往時の歴史を感じながらゆったりとそぞろ歩きできるよう
将来は車の往来を削減する方策を進めてほしいものです。
洋館のはす向かいにある町家を改修した蕎麦屋 兎屋
決して広い空間ではないけれど
昔の建物は軒が低く、軒下についつい佇んでしまう心地よい空間です。
蕎麦屋の向かいには毛利家の本陣跡
この場所には鎌倉時代から続く旧家があり
江戸時代には萩藩の本陣として建物が整備されましたが
2011年の火事で建物は全焼、貴重な歴史遺産が喪失してしまったそうです。
なんとも切ない。
旧山陽道をあとにして、
防府天満宮の参道を通って防府市公会堂へ。
その途中のまちなかに残る旧家の表門。
ケヤキの分厚い一枚板を彫り込んで縁取りを施してあり
なんとも贅を尽くしたつくりです。
まち歩きの最終地点、防府市公会堂。
佐藤武夫設計、1960年に完成した近代建築の王道を行くデザインです。
平成30年から2年かけて改修され、歴史遺産としてまちの宝となりました。
玄関ポーチとなる2層吹き抜けのピロティ
上階を支える細身の梁がリスミカルに並び
コンクリート造の建物に繊細さを与えています。
今回、防府のまちをはじめて歩いて回りましたが
人間の目線(約1.5m)とスピード(時速4キロ)でまちを眺めると
日頃見落としているものがたくさんあることに気付かされます。
「まちの持っている価値は歩く人間によって生み出される」
そのことを改めて実感したまち歩きでした。