丸の内仲通り
東京駅前の行幸通りから有楽町までつづく850mほどの区間で
道路を歩行者空間として活用するモデル事業が行われています。
沿道にはプランターなどの植栽で空間に潤いが与えられています。
歩行者空間には欠かせないベンチも常備されています。
事業では、日中は道路を歩行者空間にすることで
歩行者にとってゆとりのある空間を提供しています。
また、単なる移動空間だけでなく滞留できる「テラス」と捉え
ゆったりと過ごせる場をめざしています。
以下のようなコンセプトが謳われています。
「地中海沿いの都市では
街の通りは、応接間であり、会議室であり、
そして劇場であるといいます。
(中略)
近年の研究によれば、歩いてたのしい
通りのある街の人々の幸福度は
そうでない街に比べて総じて高いそうです。」
私もイタリアや南フランスなどを実際に歩いてきた経験から
そのことをとても強く実感しています。
まちのなかにある広場や道路などの公共空間の質の高さが
まちの豊かさに決定的な影響を与えているのです。
ヨーロッパでは1960年代に車社会の弊害を自覚し
50年かけて人間中心のまちを回復する取組みが行われてきました。
その結果、上記のコンセプトのように生き生きとした空間が復活しているのです。
その動きは、21世紀に入り
ニューヨークやメルボルンなどでも実践が進んでいます。
そして、東京の中心でも
遅まきながらとはいえ、実践活動がはじまったことは
とても喜ばしいことです。
視察した4月1日は肌寒い気候だったこともあり
昼下がりの通りを歩く人はそれほど多くはなかったものの
テーブルやイスが配され、キッチンカーなども出店して
通りのアメニティに貢献していました。
ちなみに、
歩行者空間は日中の一定時間のみなので
イスやテーブルは、誰かが片付けていることになります。
しかも、毎日欠かさず!
こちらにはエスニックのキッチンカー
すでに昼食を済ましたあとでしたが
バインミー、食べてみたかった・・・、残念
もちろん、
くつろぎに欠かせないコーヒーのキッチンカーも常設です。
通りに面したオープンカフェもありました。
室内から賑わいや活動が染み出すこのようなお店は
通りの居心地を高めるために欠かせないものです。
建物の1階部分には
通りに浸みだすように開放的なお店も幾つか見られます。
ベンチやイスにキッチンカー、潤いを与える緑など
様々な設えが工夫されていますが、
それだけではまだパーフェクトとは言えません。
沿道沿いの建物の1階部分が通りとつながり
多様な種類のお店が通りと一体になって
連続的につながって空間を作り出すことが重要なのです。
その意味では、建物側の対応がまだまだ消極的ですが
今後、この部分をブラッシュアップして
さらに豊かな通りをめざしてほしいと思います。
丸の内仲通りを抜けて日比谷シャンテ(写真左奥)の前へ。
日比谷シャンテのビルの角は円形に切り取られ
さらに上層に向かってセットバックすることで通りにゆとりを与えています。
建物の形に呼応するように道も直線ではなく緩やかに曲がり
そこにできた余白の空間にポストや植栽、ベンチなど
通りを生き生きさせるストリートファーニチャーが設えてあります。
日比谷シャンテ前から帝国ホテルへ抜ける道
通り自体は直線ですが
波打つような曲線上に植栽とベンチが配されて
まるで曲がりくねる道のように演出されています。
仲通りに続いて
ここにもゆったりを歩くことのできる歩行者空間の実践が見られます。
まだまだ、始まったばかりの歩行者空間の実践ですが
これからも着実に結果を積み重ねて
時代にふさわしい人間中心の豊かな通りが広がることを期待しています。