「つなぐ」をデザインする

 
大学卒業後、10年間、建築設計を一から教えてくださった北山さんから
最新の作品集が届きました。
 
集大成とも言えるこの作品集のテーマは「つなぐ」
 
40年以上にわたり、まちと人、景色と人、そして人と人をつなぐ建築を意識して
建築だけで完結するのではなく、周囲のまちや景色とのつながりのなかで
建築をデザインしてきた作品をみることができます。
 
 
 
 
 
 
 
最近作の草津温泉再整備計画
 
時代の変化で衰退しかけていた草津温泉の個性を丁寧に読み取り
10年以上の時間をかけて、点から線へ、線から面へと計画を展開し
少しずつ個々のスポットを改修しながら全体の回遊性を高めていった
エリアリノベーションのお手本のようなプロジェクトです。
 
4年前、現地で計画中の敷地を北山さんが案内してくれたので
完成した姿を見ると、まさに、ビフォーアフターを実感します。
 
テレビの中継で映し出される有名な湯畑周辺の賑わいには
この再整備の計画が大きく貢献しているということがよくわかります。
 
 
 
 
 
 
 
作品集には過去の事例を多く取り上げられており
若い頃に関わった福岡のベイサイドプレイス博多埠頭も掲載されています。
 
当時はバブル全盛で、派手さや豪華さばかりが求められるなか
建物と港の間にあえて広々としたウッドデッキのスペースを設けて
人々がゆったりと過ごせる空間のゆとりを生み出したデザインは
今の時代にも通ずる考え方だと思います。
 
建築自体のデザインは時代とともに変化していきますが
「つなぐ」という考えには時代を超えた普遍性があり
様々な形で私の設計にも受け継がれています。
 
 
 

 

天空のオアシス こぞら荘

 
おおらかな景色を望む山の上に置かれた小さな小屋
 
少し前になりますが、
大阪へ行った帰りに淡路島のこぞら荘を訪れました。
 
1日3組限定の宿と雑貨やお菓子の店からなる複合施設で
少し離れた別敷地にはカフェもあります。
 
 
 
 
 
 
素朴な門柱の向こうには雑貨とお菓子の店、
その間の通路を抜けるとその先は広場になっていて
山並みを遠望できるおおらかな風景に開かれています。
 
 
 
 
 
 
広場の奥には2階建ての宿泊棟が建っています。
 
建築のデザインとして見るならば、かなりの薄味ですが
淡いグレーの外壁や水平を意識したシンプルな屋根や手すりなど
余計な虚飾を排しながらも、端正にデザインされています。
 
 
 
 
 
 
雑貨店の入口
 
吟味された木製のビンテージドアや手作りの雑貨、照明やサインなど
それぞれのオブジェが店のコンセプトをそのまま表しています。
 
 
 
 
 
 
雑貨店の脇にあるトイレの入口
 
消毒液が置かれた台は控えめなしつらえですが
簡素ながら繊細なアレンジは茶道の精神にも通ずるようです。
 
 
 
 
 
 
お菓子の店のサイン
 
黒いプレートに小さくひらがなで書かれた店のサインも
本当にさりげなく簡素なものですが、繊細さと柔らかさが感じられます。
 
 
 
 
 
 
お店で提供されているオリジナルマフィンは、
種類が豊富で選ぶのが悩ましいほどです。
 
せっかくなので数種類のマフィンを購入、
淹れたてのコーヒーとともに、風景を眺めながらオープンカフェで一服。
 
 
 
 
 
 
それぞれの建物(小屋)は余計なデザインのない簡素な佇まいで
それらが動線や風景との関係を意識して丁寧に配置されています。
 
 
おおらかな風景のもつ豊かさを壊さないように
作りすぎず、飾りすぎず、控えめながら、ほどよいバランスで
豊かな場を生み出しています。
 
まさに天空のオアシスのような心地よい時間を味わうことができました。