自然と人間の協奏曲

見事なそり具合、まるで日本刀のようなシャープかつ優美な曲線が美しい。  国宝 瑠璃光寺五重塔の屋根改修工事の見学会に行ってきました。70年ぶりとなる令和の大改修では、主に傷んだ屋根の檜皮葺きを葺き替えます。

 

葺替え前の屋根の写真                          茶色い屋根に白く毛羽立ったように見えるのは、檜皮を留めていた竹釘です。檜皮は、樹齢70年以上の生きたヒノキの表面にある樹皮を剥ぎ取ったものでとても貴重なもの。檜皮葺きの寿命は本来25〜30年とのことなので、すでに耐用年数をかなり過ぎており、写真のような状況になるのも無理はありません。

 

葺替えが終わった最上層の屋根                      優美なそりを見せる3次曲面は、自然のままの檜皮を数十万枚重ね合わせ、人間の手仕事によって作り出したものです。

 

葺替えられた屋根を近くから見たところ。                 ランダムにうねる檜皮の表面はまるでざらついた動物の皮膚のようですが、一枚一枚の重ねしろは4分(約12ミリ)にそろえられており、一つの大きな屋根としてみたときにはとてもなめらかで美しい表情となるのです。

ひとつとして同じものがない自然物である樹皮を巧みに組み合わせ、全体として美しい屋根を生み出す、途方もないような匠の技です。それは、最先端のデジタル技術でもなし得ない、自然と人間の協奏曲です。

日本人の培ってきた美意識と技術の奥深さを目の当たりにして、身震いがする思いです。

 

 

人と動物、共に暮らす場

大分の臼杵の家が完成して、この秋で3年になります。

最近、猫2匹が家族に加わり、猫用のステップとともに、元々飼っているゴールデンレトリバーの段差昇降用にステップをつけるご相談をいただきました。

現在、猫や犬などを飼っている世帯は日本全体の25%あるとの統計もあり、人と動物が共に暮らすというライフスタイルが当たり前の時代になりました。一方で、農業が主体だった時代には、家の一部に家畜小屋が一体化していたこともあり、必ずしも特別なことでもないのかもしれません。建築的には、岩手の曲がり屋など、ひとつの様式になっているものもありました。

ということで、新たな時代の同居のあり方をイメージしつつ、人も動物も生き生きと暮らせる場を検討中です。

写真はお施主さんから送っていただいたお店の入り口部分ですが、どこか日本離れしていて、ナポリやシシリアの旧市街を想起してしまいました。

経年変化が進みつつある銅板の引戸や杉板の風情がなんとも渋い。      いや、すでに渋すぎです!

設計当初から経年変化を楽しみたいと言われていたお施主さんのご希望だった姿が少しずつ立ち現れていて、今後の変化がまた楽しみです。