ストイックの中に宿る美意識

深い軒がつくる陰影と木枠のあかり窓                   雪深い高山では、雪が滑り落ちないよう屋根を緩い勾配とし、軒を深くして足元を雪から守るという、この地固有の建築形態が見られます。木部には煤(すす)を混ぜたベンガラが塗られ、モノトーンながらとても美しい表情です。

 

漆黒の建物のなかに際立つ白く塗られた梁の木口              まるで紋付袴の着物のような引き締まった品格が感じられます。色も素材も形さえも自由自在に選択して表現できる今の時代にあって、ストイックに伝統的なデザインを守り続けている、その精神がなんともクールです。

 

 

 

 

まち並みのもつ価値

通り沿いに置かれた緑の鉢植え                      それぞれの家の前に置かれた鉢植えは手入れが行き届き、潤いのある気持ちのいい通りが形成されています。

まち並みというのは、みんなでつくるもの。                決して一人だけの力で生み出せるものではありません。

そこにくらす人々が美意識を共有し、日々の手入れを怠らずに継続することで成り立つもの。その協調と努力の積み重ねの総和がかけがえのない風景となって現れます。それは、単体の建築とは違う、価値の重みがあります。

 

ちなみにこちらは、2007年に訪れた南フランスのアンティーブ旧市街。石造りの古い建物が連なる細い路地には、高山と同様に、それぞれの家ごとに緑が配されて心地よい雰囲気を提供しています。

歴史や文化は違えど、美しく心地よいまち並みには、共通のエッセンスが感じられます。