熊本地震震災ミュージアム 展示棟

アクロバティックな造形が目を見張る建築は震災ミュージアムKIOKU     パッと見ただけでは空間構造がどうにもつかみきれません、

 

 

施設の全体マップ                      (熊本地震震災ミュージアムKIOKU ホームページより)

弓なり状の細長い三角形平面の展示棟を2つ繋げたような、なんとも独創的な造形です(図中右側のオレンジ色の部分) 

平面形状を見る限り、動線がそのまま空間になったような建築で、展示をするためのまとまった空間がとりにくそうにも見えますが、果たして室内空間はいかに・・・

 

 

 

実際に中に入ってみると・・・

写真の奥が展示室入口で、天井も低く通路の幅ほどの大きさしかありませんが、そこから末広がりに空間が膨らんで、展示スペースにたどり着きます。

3次元的に抑揚のある空間造形でありながら、不思議と違和感はなく、気がつくと、自然と展示空間にたどり着いていた、といった空間になっていました。

 

 

 

展示室入口から展示室内を見たところ

展示室は入口から膨らむとともに大きな開口部で阿蘇の風景と一体となった空間になっています。それは閉鎖型の展示空間とはまったく異なる固有の場所性をもったもので、震災とともにこの場の記憶が刻まれていくようです。

 

 

 

外観も独創的ですが、阿蘇特有の雄大な風景と呼応するランドスケープのような建築となっています。

そして、唯一無二のデザインは、場所から自立した概念的なものではなく、しっかりとリアリティを持っていて、新たな建築の可能性を感じるものでした。

 
 

熊本地震震災ミュージアム 震災遺構

 

2016年の熊本地震で破損した東海大学阿蘇キャンパスの校舎       各階の床には激しく亀裂が入り、サッシュは歪み、ガラスが割れています。損壊した校舎は記憶をつなぐ震災遺構として、そのままの状態で保存されています。

今回、ボランティアガイドの説明などで、震度7の前震と本震の間に、さらに震度6の余震に2回もあっていたことを知りました。想像を絶するとはこのことですが、地震を引き起こした活断層がそれまで未知の存在であったことを考えれば、改めて日本のどこで同じことが起こってもおかしくないことを肝に命じなければと思うのです。

 

 

地表に現れた断層                            長さ50mにも及ぶ断層が校舎のすぐ目の前まで達しており、この断層が校舎を貫いて建物を大きく破壊したことがわかります。

 

 

割裂したコンクリートの柱

阪神大震災でも同様の破壊状況をテレビや雑誌などで見て知ってはいましたが、実際に破壊された建物を直に見ると、その凄まじさがまざまざと感じられます。

 

 

校舎は損壊した建物の両側も含め3棟の建物がつながっていました。写真右が損壊した中央棟。両側の建物は地震の3年前に耐震補強されていたそうで、ほとんど被害は見られません。この建物を残してくれたことで、改めて耐震補強の重要性も肌で感じることができました。

東日本大震災の震災遺構や太平洋戦争の遺構である原爆ドームなど、建物は災害や戦争による悲惨さをダイレクトに伝えてくれるとても貴重な存在です。被災された方にはとても辛い存在ではありますが、それでも残された建物は、生きている我々にとって、未来への大きな教訓を示してくれる存在でもあります。