HM養成講座、
土曜日は下関にて近代建築を中心に、歴史遺産について学びました。
戦前、海陸交通の要衝として発展した下関には多くの近代建築が建設され、
戦災を免れた建物が今も下関のまちに色どりを与えています。
こちらは田中絹代ぶんか館。
1934年、旧逓信省下関電信局電話課庁舎として建てられた建物です。
老朽化による解体の危機を市民の保存運動により乗り越え、再生されています。
分離派といわれる建築スタイルで
特徴的なパラボラアーチの屋根が当時の逓信省の建築スタイルをよく表しています。
古典的な柱は庇を貫いて、頂部は切りっぱなしのままに!
理屈を超えた前衛的な表現がとても刺激的です。
それにしてもこの柱、圧倒的なの存在感です。
必要な強度を超えるプロポーションが、デザインの意思を強く表しています。
ルネサンス様式の旧下関英国領事館。
保存改修され、現在は市民ギャラリーやカフェレストランとして
市民の拠り所となっています。
そのすぐ近くには、下関南部町郵便局庁舎(左)と旧秋田商会ビル(右)が並んでいます。
特にこの旧秋田商会ビルはその様式もさることながら
ビルの屋上に緑化された庭園を持っているところが秀逸です。
1階のホールは洋風スタイル。
柱や梁に施されたモールディング、照明器具など
どれも高いクオリティでデザインされています。
2、3階は一転して和風のスタイル。
洋館のなかに和の空間が入れ子になった構成が時代の独自性を表します。
そして屋上には茶室のような座敷が建てられた回遊式庭園、
その時代のユートピアを想像させてくれます。
左には池もあり、右手のダムウェーター(コンクリートのボックス)で
下階から料理などを運び、特上庭園がサロンのように使われたようです。
和洋の混交のみならず、クライアントの創意や文化センスがあふれていて
時代を経た現在も、その強度がこの建物の存在意義を大きく支えています。
2017.12.18 設計事務所 TIME