尾道のLOG、
もともとアパートの共用廊下だった場所です。
まったく「インスタ映え」しそうにない何気なさですが
見栄えを競う表現とは対極の、奥深い質感が随所に潜んでいました。
壁の出隅部分
粗めのモルタルによるザラザラとした質感、
さらに角は丸く削られていて、陰影がとてもやわらかくなっています。
階段の角や壁との取り合い部分
すべての角という角に丸みが与えられ、面の境界が曖昧になっています。
樋の落とし口
排水溝、床端部の立ち上がり部分、そして階段
こちらも角の処理は徹底されています。
この淡い質感は、
あたかもジョルジュ・スーラの点描のような静謐感を感じさせます。
スチールの手すり
手すり自体も丸パイプで角もゆるやかに曲げてあります。
手すり子のベースになっているフラットバーの角も
丸く削られているのがわかりますか?
こんなところにまで一貫した考えが現れていて
設計者による並々ならぬ思いが伝わってきます。
パイプの塗料もつや消しで
光は反射ではなく、にじむように物質を映し出します。
カフェの内部
カウンターは木下地に和紙を貼り、漆で仕上げられているそうです。
その手触りはやわらかく、鉄とは異なる温もりが手に伝わってきます。
天井の左官仕上げ
職人の指導のもと、スタッフ達で仕上げたそうで
その苦労と込めた思いが濃縮されています。
土間は左官の掻き落とし
床はそのままベンチにつながり、一体の仕上げになっています。
ここにはシャープな造形や派手な表現は存在しません。
しかし、
慎重に吟味された質感がコンクリートの建物を包み込んで
静かで奥行きのある空間を成立させています。
体験することでしか味わえないこのクオリティ、
時間の流れ方さえ覚醒させてしまうような力を感じます。
2018.12.21 設計事務所 TIME