皆川明の展覧会 「つづく」

GW前の4月23日から皆川明の展覧会が福岡市美術館で開催されています。
ちょうど臼杵の家へ行った帰りに、見学してきました。
 
 
 
 
 
 
会場には、これまでにデザインした400着以上の服が並んでいます。
 
服の形はとてもオーソドックスですが
生地や柄、色合いなどはどれ一つ同じものはなく
その創作に込めたのエネルギーにため息が出ます。
 
 
 
 
 
 
定番のタンバリン
 
一見、何気ない柄に見えますが
それぞれの輪は正円ではなく、あえて微妙な歪みをもたせ
さらに細部にもこだわり抜いています。
 
 
 
 
 
 
このメモにもあるように
刺しゅうはあえてラフに、でもジンタン(丸い粒)は重ならないように
明確な意志をもってイメージを方向づけています。
 
 
 
 
 
 
この三つ葉では刺しゅうによる輪郭線が一定ではなく
毛羽立ちの具合をあえてランダムに、ラフに表現しています。
 
 
 
 
 
 
こちらの生地は、遠目にはわからないのですが
近づいてみると色違いの糸を無数に織り込んでいることがわかります。
 
そこには、人の心を動かすほどの濃密な表現が込められていました。
 
 
 
 
 
 
うさぎをモチーフにしたこちらのパターン
 
白地にブルーのうさぎを配したそのパターンはシンプルですが
ブルーの色は水彩画のような微妙な濃淡があり
人の手でしか得られない不均質な温かみが現れています。
 
それは、まるで陶器の表情に通づるようです。
 
絵付における形の揺らぎや色のにじみ、かすれやムラなど
人の手でしか生み出すことのできない、唯一無二の味わいがあります。
 
 
 
 
 
 
なかにはこんな挑戦的な服も
 
知らない人が見れば、ぼろに間違われそうですが
意図的に生地を破いているようなデザインです。
 
表地はくすんだ色なのに、
破れたところから覗くスカイブルーの鮮やかな色がとてもスリリングで
ギリギリのバランスを取っているようにも感じます。
 
 
 
 
 
 
一着一着に渾身の思いを込めて生み出されたこれらの服たち
 
皆川さんが自身のブランドを立ち上げた頃、
巷にあふれていたのはDCブランドの刺激的な服たち。
それは、バブル時代の熱狂を象徴するような消費される一過性の存在でした。
 
奇抜さや派手さばかりを競い合うようなそれらの服に対し
「特別な日常の服」にこだわって作られてきたこれらの服は
使い捨てではない、着る人一人一人の記憶を刻みながら
服とともに紡がれる時間を経て、その人にとっての愛着となっていきます。
 
このことは、建築という異なるフィールドにいる自分にとっても
バブル時代をリアルタイムで通過してきた同時代人として
とても共通する感覚を覚えます。
 
バフルの頃は、まさに建築は使い捨ての極致にありました。
とても大きな存在であるはずなのに、
非常にはかない、薄っぺらいものになっていました。
 
本来、建築は服以上に長い時間を生きるはずの存在です。
そこで日々積み重なる時間が暮らす人や家族にとって
かけがえのない時間となり、それがいつか愛着となるように。
 
皆川さんのものづくりを通して
改めてその思いを確認することのできた貴重な機会です。
 
 
 

works に臼杵の家と大神の家2をUPしました。

ホームページのworks に臼杵の家と大神の家2をUPしました。

 
 
臼杵の家は、建主のつくる繊細なお菓子のように
簡素な素材と職人の丁寧な仕事で生み出された
穏やかな時間が流れる心地よい住まいです。
 
 
 
 
 
 
大神の家2は家の機能をあまり限定せず、
家族4人が家のあらゆる場所をその時々の気分に応じて
のびのびと使えるような自由で開放的な住まいです。
 
それぞれの個性を持ったこれらの家で
日々のくらしが積み重なり、愛着が醸成されることを期待しています。
 
 
 
 

大神の家2

臼杵の家

臼杵の家 訪問

臼杵の家が完成して半年が経ちました。
植栽の新芽も芽吹き始めたところで、写真撮影も兼ねて伺いました。
 
 
 
 
 
 
 
水平線を強調した建物に樹木が加わり、少しずつ風景が育ち始めています。
 
 
 
 
 
 
5年もすれば樹木が成長し、地域に溶け込む風景になりそうです。
 
 
 
 
 
 
室内もカフェとしての設えが整い、さらに雰囲気が出てきました。
 
 
 
 
 
 
水平スリット窓越しの風景
樹木の緑が加わり、こちらも潤いが増しています。
 
 
 
 
 
 
建具を全開放した中庭
板壁を背景にしたこの場所も静かな美しさが現れています。
 
建主のこだわりによって建築の味わいにさらに深みが加わり
この場所で過ごす時間が豊かに進化していくことを期待しています。
 
 

丸の内仲通りアーバンテラス

丸の内仲通り
東京駅前の行幸通りから有楽町までつづく850mほどの区間で
道路を歩行者空間として活用するモデル事業が行われています。
 
 
 
 
 
 
 
沿道にはプランターなどの植栽で空間に潤いが与えられています。
 
 
 
 
 
 
歩行者空間には欠かせないベンチも常備されています。
 
 
 
 
 
 
事業では、日中は道路を歩行者空間にすることで
歩行者にとってゆとりのある空間を提供しています。
 
 
 
 
 
 
また、単なる移動空間だけでなく滞留できる「テラス」と捉え
ゆったりと過ごせる場をめざしています。
 
以下のようなコンセプトが謳われています。
 
「地中海沿いの都市では
 街の通りは、応接間であり、会議室であり、
 そして劇場であるといいます。 
 (中略)
 近年の研究によれば、歩いてたのしい
 通りのある街の人々の幸福度は
 そうでない街に比べて総じて高いそうです。」
 
私もイタリアや南フランスなどを実際に歩いてきた経験から
そのことをとても強く実感しています。
(詳しくは、このブログの「週末連載〜南フランス」にてレポートしています)
 
まちのなかにある広場や道路などの公共空間の質の高さが
まちの豊かさに決定的な影響を与えているのです。
 
ヨーロッパでは1960年代に車社会の弊害を自覚し
50年かけて人間中心のまちを回復する取組みが行われてきました。
その結果、上記のコンセプトのように生き生きとした空間が復活しているのです。
 
その動きは、21世紀に入り
ニューヨークやメルボルンなどでも実践が進んでいます。
 
そして、東京の中心でも
遅まきながらとはいえ、実践活動がはじまったことは
とても喜ばしいことです。
 
 
 
 
 
視察した4月1日は肌寒い気候だったこともあり
昼下がりの通りを歩く人はそれほど多くはなかったものの
テーブルやイスが配され、キッチンカーなども出店して
通りのアメニティに貢献していました。
 
ちなみに、
歩行者空間は日中の一定時間のみなので
イスやテーブルは、誰かが片付けていることになります。
しかも、毎日欠かさず!
 
 
 
 
 
こちらにはエスニックのキッチンカー
 
すでに昼食を済ましたあとでしたが
バインミー、食べてみたかった・・・、残念
 
 
 
 
 
 
もちろん、
くつろぎに欠かせないコーヒーのキッチンカーも常設です。
 
 
 
 
 
 
 
通りに面したオープンカフェもありました。
室内から賑わいや活動が染み出すこのようなお店は
通りの居心地を高めるために欠かせないものです。
 
 
 
 
 
 
建物の1階部分には
通りに浸みだすように開放的なお店も幾つか見られます。
 
ベンチやイスにキッチンカー、潤いを与える緑など
様々な設えが工夫されていますが、
それだけではまだパーフェクトとは言えません。
 
沿道沿いの建物の1階部分が通りとつながり
多様な種類のお店が通りと一体になって
連続的につながって空間を作り出すことが重要なのです。
 
その意味では、建物側の対応がまだまだ消極的ですが
今後、この部分をブラッシュアップして
さらに豊かな通りをめざしてほしいと思います。
 
 
 
 
 
 
丸の内仲通りを抜けて日比谷シャンテ(写真左奥)の前へ。
 
日比谷シャンテのビルの角は円形に切り取られ
さらに上層に向かってセットバックすることで通りにゆとりを与えています。
 
建物の形に呼応するように道も直線ではなく緩やかに曲がり
そこにできた余白の空間にポストや植栽、ベンチなど
通りを生き生きさせるストリートファーニチャーが設えてあります。
 
 
 
 
 
 
日比谷シャンテ前から帝国ホテルへ抜ける道
 
通り自体は直線ですが
波打つような曲線上に植栽とベンチが配されて
まるで曲がりくねる道のように演出されています。
 
仲通りに続いて
ここにもゆったりを歩くことのできる歩行者空間の実践が見られます。
 
まだまだ、始まったばかりの歩行者空間の実践ですが
これからも着実に結果を積み重ねて
時代にふさわしい人間中心の豊かな通りが広がることを期待しています。
 
 

東京駅丸の内駅前広場

4月の初め、出張で東京に行ってきました。
その際、まちや建築をいくつか視察してきたので随時アップしていきます。
 
東京駅を降りてまず向かったのが丸の内駅前広場
設計は、徳山駅前広場と同じデザインチームが担当しています。
 
2017年に完成し、首都の玄関口にふさわしい景観と
ゆとりのある歩行者空間をもつ広場に生まれ変わりました。
 
 
左手に辰野金吾の設計による東京駅駅舎、
正面の高層ビルの低層部分は、吉田鉄郎設計の東京中央郵便局。
建替えの際、元のファサードが保存されました。
 
大正時代の様式建築、昭和初期のモダニズム、そして背景に現代建築、
これらが一堂に展開する建築の歴史博物館のような広場です。
 
 
 
 
 
 
広場から皇居へ伸びる行幸通り
両側に建つビル群が屏風のように連なり、軸線を強調しています。
 
 
 
 
 
 
 
丸の内駅前広場には夏場の温度上昇を抑制する芝生と
大きな木陰を作り出すケヤキの並木が植えられ
その足元には人々が休憩することのできるベンチが設けてあります。
 
ベンチの後方に見えるキノコのような円筒状の構造物は
もともと存在していた地下の換気塔をデザインし直したもので
景観を壊さないよう、高さを抑えることに腐心されたそうです。
 
 
 
 
 
 
 
行幸通り側から見返した東京駅
 
広大な歩行者空間のなかに街路樹やベンチ、街灯。
駅舎のもつ美しさを最大限尊重してデザインされ、調和した風景を生み出しています。
 
 
 
 
 
 
 
東京駅の背後に建ち並ぶ高層ビル群
これらは景観上の課題をはらんでいますが
外壁がガラスで揃えられ、その存在を薄めようとしているようにも感じます。
 
 
 
 
 
 
 
行幸通りでは結婚式の前撮りが行われていました。
この場所の景観が、門出にもふさわしい演出効果を与えています。
 
 
 
 
 
 
 
行幸通りの真ん中部分は広場状の歩行者空間になっていて
ここでもイベントが行われていました。
 
日本の駅前のなかで最も格式高いこの場所ですが
日常には市民の活動にも開放されている、それを目の当たりにしました。
 
公共空間をただ眺めるだけの「飾り物」に終わらせず
市民が共に過ごせる場として共有していく、素晴らしい実例です。
 
 

大神の家2 お披露目会

大神の家2でお披露目会が行われました。
晴天に恵まれ、とても気持ちのいい1日です。
 
 
 
 
 
 
子供たちはアスレチックネットに寝っ転がったり
走り回ったりと、思い思いの場所で過ごします。
 
 
 
 
 
 
人の振る舞いが加わって、家に生命感が芽生え始めました。
 
 

まるごと遊び場

吹抜けのアスレチックネットで大の字に
 
小さな家の大きなハンモックがこの家の個性の一つです。
1歳と6歳の子供たちにとって空間がまるごと遊び場のようなこの家で
すくすくと育ってくれることを願っています。