大神の家2 外壁工事

2月に入り、大神の家では外壁工事が始まりました。
今回の仕上は、汚れが目立ちにくい濃い色のガルバリウム鋼板の波板です。
 
 
 
 
 
 
入り口の庇は垂木を見せるため
垂木の際には防水用の見切を回しています。
 
45センチピッチで壁から張り出す垂木に合わせて
一つ一つ見切を回しています。
 
そこに板金を差し込んで仕上げますが
その下に窓もある部分などは、数ミリでもずれるとはまらないので大変です。
 
やや小さめに切り込んでは差し込み、垂木にあたる部分を確認し
さらに凹凸に合わせて金切バサミで形を合わせていきます。
 
図面で描くのは簡単ですが、
実際の工事ではけっこう手間がかかります。
 
 
 
 
 
窓が絡む部分はかなり複雑な形になりますが
何度が調整して、なんとか一枚ではめ込まれました。
 
寒い中、手がかじかむ状況での仕事は本当に大変そうで
職人さんにはとにかく頭が下がります。
 
 
 

建具用の板選び

大神の家に使う玄関引戸用の板を選びに来ました。
 
今回は玄関戸も杉のヌキ板を使うことにしました。
 
化粧っ気のない、素っぴんの肌のようなイメージですが
思い切って、あるがままの表情を生かしてみます。
 
上の写真は、引戸の屋外用に選んだもの。
雨風や紫外線にさらされるので、耐久性を重視して水に強い赤身を選びました。
 
 
 
 
 
 
こちらは、玄関の内部側用。
室内の壁との調和を意識して
比較的柔らかい表情のものを選んでいます。
 
建具にこれほど粗い表情のものを使うのは初めてですが
既製品にはない新鮮な雰囲気になることを期待します。
 
 

板壁の仕事ぶり

大神の家では室内の仕上げ工事が続いています。
壁の板貼りがほぼ終わり、天井仕上げに進んできました。
 
 
 
 
 
 
天井板が壁に食い込む部分
壁と天井の取合う部分につける回縁を省いたため
壁板と天井板が直接噛み合う、逃げのない納まりです。
 
そのため、壁と天井を隙間なくミリ単位で合わせる必要があります。
 
板は一枚一枚、厚みの違いや反りなどで凹凸があるため
壁に合わせて切り込む形状を慎重に測っています。
 
 
 
 
 
 
鉛筆で印をつけた部分をさらに削り込んで
壁の形に合わせていきます。
 
素材はざっくりとした仕上げのヌキ板ですが
加工にかなりの手間が加わることによって
それがそのまま細部の緊張感に現れていきます。
 
 

手間の蓄積について

大神の家、2階室内の板貼りが進んできました。
 
今日も現場はかなり冷え込んでいますが
大工さんが板の並びを考えながら一枚一枚吟味して丁寧に貼ってくれています。
 
手間を省いて早く仕上げるのが主流の時代ですが
だからこそ手間暇かける仕事には意味があると考えます。
 
すぐに完成する家にはない手間の蓄積は
住むほどに味わいを増してくれることと思います。
 
 

大神の家2 板壁仕上げ

大神の家では室内の板壁仕上げ工事が始まっています。
 
本来下地用に使うヌキ板によるざっくりとした仕上げは
新建材のような表面的なキレイさとは対極的で、ちょっとワイルドです。
 
山小屋のような表情も連想させますが
開口部まわりは意識的にすっきりと納めてもらい
壁が切り取られているイメージをクリアにしています。
 
 
 
 
 
 
開口部の上側は壁勝ちにして窓枠を目立たないように納めています。
 
 
 
 
 
 
逆に開口部の下側はホコリ溜りになりやすいので
超仕上げの板材を枠勝ちにして掃除がしやすいように配慮しています。
 
ざらつきのある壁板との違いがわかるでしょうか?
 
 
 
 
 
 
壁の表情
 
仕上げ用の板ではないので木目も節もラフなところがあり
留めていたバンド部分の日焼け跡もあるがままに使っています。
 
粗めの素材に対し、大工さんの仕事はとても丁寧です。
この粗めと丁寧の掛け算が、常識的な壁とは違う
新しい空気感を空間に与えてくれると期待しています。
 
 

時をつかまえて

あけましておめでとうございます
 
正月休みが終わり、今日から始動いたしました。
昨年末には「時間の価値」について長々と語ってしまいましたが
気がつくと、令和もすでに4年目です。
コロナ禍が続く中で、今年もあわただしく時が過ぎていくことと思います。
 
少しでも、その時をつかまえてじっくり味わうことができるように
今年も、豊かな時間を過ごせる場の模索を続けて参ります。
 
本年もよろしくお願いします。
 
 

ポジティブに時間をつかう

今年は臼杵の仕事で1年間、現場に通いました。
昨年の11月に始まった工事は着工からほぼ1年がかりでようやく完成、
標準的な住宅の2倍以上の時間を要しました。
 
建主も工務店もその時間にとても寛容であったことが功を奏し
「早いほうがいい」というのが当たり前の世の中で
あえて時間をかけることの共通意識を持てる仕事でした。
 
話は変わりますが
今から28年前、1年2ヶ月をかけて世界を旅しました。
 
当時、東京の設計事務所で働いていましたが
時代はバブル全盛期で、次から次に仕事が舞い込み、
処理するだけで精一杯、とにかく時間に追われていました。
 
そもそも建築をじっくりと考えて設計したいと思って選んだ設計事務所でしたが、
バブルの勢いで、考える余裕すらなくなっていました。
 
そこで一念発起、
一旦仕事を辞めて、世界の建築を自分の目で見て回ろうと思ったのです。
 
猫の手も足りたい状況の中でしたが、所長に無理を承知でお願いし、
抱えていたプロジェクトを1年かけて終わらせると、
いよいよ旅をスタートさせたのです。
 
旅のルートはロシアをシベリア鉄道で横断し、東ヨーロッパを南下してエジプトへ。
その後、中東を回ってヨーロッパ、最後にアメリカを巡るというものでした。
 
世界の建築を巡るにあたり、古代から現代に至る建築の数々の資料を整え
建築に関する情報は万全でした。
ところが、もともと海外旅行の経験は多くなかったこともあり
旅先の事情や現地での対応力を身につけていなかったため
最初からトラブル続きでした。
 
シベリア鉄道ではこそ泥に金をすられ
モスクワでは風邪をひき込み、エジプトでは腹を下すなど
最初の1ヶ月で心身ともにかなりのダメージを受けてしまいました。
 
その間、とにかく遅れを取り戻そうと焦れば焦るほど体調が乱れて、
建築を見る集中力も続かないという悪循環でした。
 
その後、中東のシリアで出会った日本人旅行者とトルコで再会し
しばらく一緒に旅をする事になりました。
 
彼は日本を出てすでに3年以上経っており
中東の前はアフリカ大陸を縦断して南アフリカの喜望峰まで至り
1年8ヶ月をかけてここまで来たとの話でした。
 
途中、病気で入院したり、強盗に襲われたり
荷物を丸ごと盗まれたりと、なかなかタフな経験をしていました。
それでも出会ったときには、ちゃんとリュックに必要な旅行道具がそろっており
なんともたくましさを感じました。
 
その彼とはトルコを2週間ほど一緒に旅しましたが
私とは時間の使い方がまるで違う事がとても興味深かったのです。
まちや遺跡など、様々なものを見て回りましたが
出歩くのはせいぜい数時間から半日ほど、
あとはホテルかカフェでのんびり過ごすのです。
 
それまで、中東各国ではバスの時間を緻密に調べて
一分でも一秒でも無駄にしないように時間を使おうとしていました。
まるで東京で暮らしていたときのような時間の使い方は
中東という場所ではうまくいかず、ストレスばかりがたまっていました。
 
せっかく自由な時間ができたのに、自分は何をしているのだろう?
トルコを旅するうちに、そのことに気づきました。
 
それまでは、とにかく自分が動き回って何かを得ようとしていましたが
トルコでは、自分は動かずに周りの動きを感じることができることを発見したのです。
 
やみくもに何かを得ようと焦っても、大した成果は得られない。
むしろ、じっくりと時間をかけることで見えてくることがある。
 
その後に訪れたモロッコでのエピソードですが
サハラ砂漠の入口にあたるワルザザードというまちがあります。
そのまちで長距離バスを待っていたところ、9時過ぎに来るはずのバスが一向に現れません。
バスを待っている人はいるのですが、誰も時間を気にするそぶりがありません。
近くにいたモロッコ人にバスはいつ来るんだろうと何気に聞いてみると
彼は一言、「インシャッラー」と答えました。
つまり、そんなこと、神様次第だよ、と言う意味です。
 
なるほど、そこは広大なアフリカ大陸、
細かいことを気にしていても仕方がないではないか。
妙な説得力を感じたものです。
 
この旅は、世界の多くの建築に触れることができただけでなく
本質的な「時間の価値」のようなものに気づかせてくれた貴重な経験でした。
 
現代社会に生きる私たちは、日々時間に追われがちです。
少しでも早く、早くと気が急いて
気づくと目的だったはずのものはあっという間に過ぎ去っていたりします。
 
いまだに続いているコロナ禍もあと数年続くという専門家もいます。
1日でも早く日常が戻りますようにと願うのは人情ですが
願ってもかなわないことも、この世には存在します。
 
そんなとき、逆に、今起こっている現象を俯瞰してみることで
この状況でもストレスを減らし、豊かさを見つけることもできると思えるのです。
 
時間は誰にでも平等であるはずですが
使い方によっては、人それぞれに生まれる時間の価値が変わってきます。
 
私にとっては、世界旅行で得た時間の使い方が
いまの日本でも十分に生かせるものだと思っています。
 
仕事では常に締切りや期限を求められるのは仕方のないことですが
それでも、できるかぎりじっくりとかみしめて時間をかけるよう意識しています。
 
建築をデザインし、つくることでもその大切さは同様で
それはその先の「豊かなくらし」につながっていくと信じています。
 
話がかなり長くなりましたが
TIMEはその「豊かなくらし」や「豊かな日常」をサポートすべく
来年もポジティブに時間をかけて、その価値を提供していきたいと思います。
 
 

大神の家2 造作工事2

今日はクリスマスイブ、年末も近づいてきましたが
大神の家2では、内部の造作工事が続いています。
 
2階、屋根下の断熱材や天井・壁下地もほぼ完了。
大きく天井高をしぼったロフトの低さがわかるでしょうか?
立つと頭が当たりますが、座るととても心地よい高さです。
 
 
 
 
 
 
壁・天井仕上げ用の杉板が搬入されてきました。
本来は下地材として使うローコスト部材のため表情は粗めですが
敢えてこのざっくりした素材でデザインを攻めていきます。
 
 
 
 
 
 
 
アップで見るとざっくりとした表情がよりわかります。
塗り壁でいうと荒壁や中塗り壁程度のコテ跡が残った感じに近く
この素材で覆われた空間から生まれる素朴な表情に期待しています。
 
 
 
 
 
 
 
1階のキッチンは不燃のプラスターボードで防火性を強化、
キッチン以外の空間は杉板仕上げを可能にしています。
 
 

チューケン本社ビル サイン工事2

先日据え付けたステンレスのサインベースに社名のシートを貼付け
サイン工事が完了しました。
 
 
 
 
 
 
ステンレスはツヤの少ないバイブレーション仕上げで
建物のルーバーにできるだけ近い質感に合わせています。
 
 
 
 
 
 
遠目に見ると本社ビルと同じような質感で控えめに光り
イメージ通りの調和した表情にまとまりました。