一段落

 
寝室改造工事がひとまず完了
 
屋根のガラス瓦の部分は寝室の天窓、
外壁に開けた開口は小屋裏収納の突き出し窓です。
 
 
 
 
 
寝室の天井見上げ
 
暗室のように暗かった寝室は天井を取り払い
天窓によって、光に満ち溢れる空間に一新されました。
 
 
 
 
 
ベッドとクローゼットを仕切る衝立壁
ルイスポールセンのビンテージがユーモラスですが
夜になると下の写真のように間接の光だけがクローズアップされます。
 
 
 
 
 
ルイスポールセンの柔らかい光
 
 
 
 
 
白い室内とコントラストを成す柿渋の太鼓ふすま
和室との仕切りであり、南北に風を動かす通風の役目も担っています。
 
 
 
 
 
太鼓ふすまを開けると和室側の壁は火灯窓の形状に。
茶室の給仕口に着想を得た、高さ4尺(約1.2m)ほどの小さな開口、
表座敷と寝室の結界となるこの部分に建主のこだわりが詰まっています。
 
 

土壁、施工完了

寝室改造工事、
4連休の中日に土壁の仕上げ塗りが完了しました。
 
仕上と言っても表情はかなり粗めで、凄みがあります。
藁を混ぜたこの壁は、土に含まれる鉄分の酸化によって
10年もすると「待庵」のような渋い表情に変わっていくそうです。
 
 
 
 
火灯口の曲面を仕上げる福田さん。
 
独特の表情や細かい細工などありながら
1時間ほどで手際よく仕上げて颯爽と現場を去っていく、
その姿、カッコよすぎです(笑)
 
 
 

和室の土壁下地塗り

寝室改造工事もいよいよ終盤、
隣室の和室との間仕切壁を左官で塗っていきます。
 
左官仕事はこの人、福田左官店の福田さんです。
いつもワンポイントですいませんが、今回も期待しております!
 
まずは、ボードのジョイントや火灯口の曲線部を
ジョイントテープで手際よく補強していきます。
 
 
 
 
 
次に下地の石膏を塗りつけていきます。
今回はプラスターボート貼りに使うGLボンドを使用。
 
 
 
 
 
火灯口、GLボンドを塗ったところ
曲線部をコテで押さえるのは、想像するだけで難しそうですが
あっという間に難なく終了。
 
 
 
 
 
石膏の上に土壁を重ねていきます。
今回使用する土は、淡路のものだそうです。
 
山口県の赤土よりやや薄めの黄土色です。
淡路の土は赤土より鉄分が多いで、経年変化が起こりやすいのだそうです。
 
 
 
 
 
建て主の希望された壁のイメージは、千利休の待庵の土壁。
いかにも荒々しく、時間の経過が生み出す凄みがあります。
今回、このイメージを目指して仕上げていきます。
 
 
 
 
 
寝室側の白い壁との境には、普通は柱や枠が入りますが、
小さい開口に枠をつけるとなんともうるさくなってしまうので
今回はあえて木の見切を省略し、土壁を丸面に仕上げて見切りとします。
 
 
 
 
 
専用の丸面コテを使って、器用に曲線部分を均していきます。
 
 
 
 
 
 
柱との取り合い部分は、曲線を反転させて納めます。
 
図面で描くのは簡単ですが、
この三次曲面をどう仕上げるのだろうと思っていたのですが・・・
 
無駄のない手さばきであっという間に均し終わりました。
さすがの職人技です。
 
 
見ての通り、これらの形はすべて人の手で作られています。
「手仕事」には機械やAIではとても表現できない塩梅があります。
 
それは、熟練の職人がもつ感覚が身体を通してしか生み出せないもので
既製品では到底たどり着けない値打ちを持っています。
 
手仕事は工業製品に比べると高くつきますが
工業製品のように新品の状態が一番きれいで、
時間とともにどんどん劣化していくのとは対照的に
時間が経つとともに渋みが加わり、愛着が増していくものです。
 
それを考えれば、手仕事は必ずしも、割高ではなく
むしろ、愛着の増加する分だけ割安になるとも言えるのではないでしょうか?
 
 
 
 
 
丸面を押さえていたコテ、福田さんの手作りだそうです。
 
 
 
 
 
コテには塩ビのパイプが貼り付けてありましたが
この塩ビの厚み分が、仕上の厚みになるそうです。
使用する道具も含め、よく計算されています。
 
 
 
 
土を塗りつけたところ。
火灯口の曲線部がきれいに丸面で弧を描いています。
 
 
 
 
 
寝室側から見たところ。
この後、数日乾かして、最後の仕上塗りを行います。
 
 

柿渋のふすま、製作中

寝室の改造工事、特注のふすまの製作中ということで
表具屋さんまでやってきました。
 
日ごろ、表具屋さんに来る機会は少ないのですが
せっかくなので製作途中で仕上げ方をじかに確認させていただきました。
 
和室と寝室を仕切る建具を特別な存在としたいという建て主のご要望を受け
ふすまの形や寸法、素材や仕上げの風合いを建て主とあれこれ話し合って
茶室の茶道口をモチーフに、柿渋の和紙で仕上げることになりました。
 
 
 
 
 
下張りまでが終わったふすま
薄い和紙を張り重ねて、しっかりとしたふすまの下地をつくっています。
 
下地段階ですが、既製品にはない手仕事の繊細さが現れていて
これを見ただけで人の手で手間をかけて作っていることが実感できます。
 
 
 
 
 
下張りに使われている和紙。
光にかざすと透けて見えるほどの薄い和紙ですが
洋紙に比べて湿気にも強くて貼りやすいそうです。
 
職人さんのリアルな話から
改めて日本の気候にあった素材が現在でも適していることを教えられます。
 
 
 
 
 
すでに引手部分には柿渋和紙が張り込んであります。
 
引手の形状は「ちり落とし」という古くからある形状で
ふすまの厚みを利用してホコリが溜まりにくいように
引手の正面部分が下向きに傾斜しています。
 
 
 
 
 
仕上げに張り込む柿渋和紙を確認。
この色合いと表情を求めて、あれこれ探して求めたものです。
 
こちらも手作りなので、一枚一枚の色合いや表情が違います。
今回は建具寸法が小さいので上下3段のシンプルな割付で
色合いなどの違いが極端にならないよう、張り込む位置を確認。
 
たった1枚の小さなふすまですが、キラリと光る存在感をもつ
他のどこにもない、この家だけの一品ものです。
 
 

ヘリテージマネージャー実践講座@向山文庫

ヘリテージマネージャー講座、
今回は、光市初の図書館として明治19年に建てられた向山文庫にて
実践的な実測調査を行いました。
 
 
 
 
 
正面入口、
風化して文字は読みにくいですが、扁額の字は三条実美によるもの。
全体として、かなり傷みはあるもののなかなか凄みのある表情です。
 
 
 
 
 
台風が接近する前日の残暑が厳しい日中でしたが
みんな汗だくになりながら、手分けして実測調査に入りました。
 
 
 
 
 
入口庇の軒の出、高さ、各部材の断面寸法などを図っていきます。
今回私は、図った寸法を図に起こす係を担当、
測定する係との連携の大変さを痛感しました。
 
 
 
 
 
 
暗い内部も懐中電灯で照らしながら
一つ一つ寸法を当たっていきます。
それにしても大きく曲がった太鼓ばりが秀逸な空間です。
 
 
 
 
 
外壁は、1階が焼杉貼り、2階は土壁仕上げ。
焼杉の一部が開口部(跳ね上げ窓)になっていますが
閉じると外壁と同化するように納められていて、
さりげなくもデザインへのこだわりが見て取れます。
 
 
 
 
 
2階の窓枠も刀掛け(枠を細く見せる納まり)になっていて
小粒で蔵のような、一見何気ない建物に見えますが
なかなかきめの細かいデザイン配慮が見受けられます。
 
 
 
 
 
土壁の表情
風雪にさらされて風化した表情が渋すぎます。
 
簡素ながら深みのある表情や繊細なディテールなどを併せ持ち
このままうち捨てるにはあまりに忍びない、風格のある建築です。
 
 

寝室改造工事、仕上げ工事

寝室の改造工事、天井の塗装が完了。
天窓から広がる光が、小屋組の構造材を生き生きと浮かび上がらせます。
 
 
 
 
 
小屋を受ける梁は元は天井に隠れていた部分なので
かんな掛けされていないざっくりと荒い表情です。
そこへ柔らかい光が木材の表情を与え、豊かな陰影が現れています。
 
 
 
 
 
工場で製作されたレコード棚が現場に運ばれてきました。
電気配線を施し、ここからは大工工事で仕上げていきます。
 
 
 
 
 
裏面はレコードとオーディオ機器用の棚になっています。
レコードを入れる高さ2.2mの重たい棚なので、床下地を補強し、
地震で転倒しないよう、既存の柱に振れ止めを取っています。
 
 
 
 
 
外部サッシュのさらに外側に目隠し格子用の枠が取り付きました。
2.7mのワイドな開口全体に格子がはめられます。
 
 

寝室改造工事、途中経過

カピン珈琲の寝室改造工事
和室との間にくり抜かれたような形の開口ができあがりました。
 
写真では分かりづらいですが、
曲線から直線に切り替わるところがやや滑らかでないので
塗装前に少し手直ししてもらいます。
 
 
 
 
 
現場では塗装の下地工事が始まりました。
今回、壁から上の吹き抜け部分はプロの職人さんが仕上げます。
 
 
 
 
 
ベッドのバックボードを兼ねるレコード棚
粗方できあがった棚のつくりを家具工場にチェックしに来ました。
キャスター台の上に載っていますが、それでも2mを超える大物です。
 
 
 
 
 
奥行きが出っ張っている部分にはオーディオが設置されます。
まだ製作の途中なのでちょっと変な形ですが、
これから現場に搬入して大工さんと連携しながら仕上げていきます。
 
 

現代建築に勝る深みあり

重要文化財、旧毛利家本邸画像堂の保存修理工事
ヘリテージマネージャーを対象にした工事見学会に参加しました。
 
大正7年、自然の森を切り開いて造営された画像堂、
長年にわたり木々の落ち葉が屋根の排水を妨げ
雨漏りで傷んだ建物をこのたび修理することになったそうです。
 
 
 
 
 
建物は背の高い内陣(写真左端)のまわりに庇状に外陣が取り囲む形状。
外陣のしっくい壁部分に耐震補強を施し、仕上げ直しているそうです。
 
 
 
 
 
内陣を構成する骨組みは漆状の塗りを施し、黒光りする独特の表情、
床も黒を基調にした研ぎ出し仕上げで
伝統的な空間様式の中にも大正時代の近代的なセンスが見られます。
 
 
 
 
 
吹抜けた内陣上部の欄間には四周全体にガラス障子がはめ込まれ、
ハイサイドライトのように光が空間に降り注ぐ仕組みです。
 
この辺りのデザインにも、和の空間性とは異なる指向性があり
西洋建築にある垂直方向の特徴が見て取れます。
 
 
 
 
 
 
外陣部分の傷んだ屋根は吹き替え工事中
瓦の下地は土ではなく杉皮で、構造的な軽量化を考えていたのかどうか・・・
いずれにしても、湿潤な日本の気候に適した自然素材が生かされています。
 
 
 
 
 
 
内陣の宝形屋根
甍の生み出す優美な表現は和の伝統が生かされています。
それにしても、デジタルな機械がない時代に
三次元の造形をたくみに生み出すアナログの職人技はやはりすごい。
 
 
 
 
 
 
外陣、屋根垂木の間に通気抜きが設けてあります。
このあたりは、設計者による科学的な思考を感じます。
 
真壁構造や構造上の組み物、格子などのパーツなど
基本的な様式は和の伝統を引き継ぎながらも
明治以降に入ってきた西洋文化をアレンジしながら
伝統と現代性(時代性)との間での試行錯誤した姿が垣間見られます。
 
伝統は単なる過去の遺物ではなく、現代の文化にも確実につながっていることを
大正時代の設計者は今以上に意識し、時代の本質をつかもうとしたように思えます。
それは、単に新しいだけで無造作にデザインされがちな現代建築に勝る深みをもっています。
 
 

ただの換気用ではない窓

下地用のコンパネを曲線状にカットする大工さん
茶室の給仕口に着想を得て、火灯口風の開口部です。
 
 
 
 
 
コンパネ下地に仕上げのMクロス合板を重ね貼り
 
開口は南北の風の流れをつくるために
和室と寝室の間仕切りの一部をくりぬいたもの。
 
しかし、ただの開口では面白くない。
ということで伝統的な茶室の給仕口のイメージを引用、
高さも1.2mほどに抑えて緊張感をもたせています。
 
 
 
 
 
ほぼ形ができあがりました。
 
奥の和室側は荒い土壁に、
寝室側は白い空間に合わせて塗装で仕上げていきます。
 
 
 
 
 
こちらは小屋裏収納に新設する突き出し窓の枠材
 
雨がかり部分の木製窓なので
耐久性のあるしっかりとした赤身の杉材を手配していただきました。
 
 

トップライトの施工

カピン珈琲のリノベーション、
今日はトップライトの施工確認にきました。
 
すでに、屋根に穴が開けられています。
 
 
 
 
 
ほぼ真っ暗だった北側の部屋に眩しいほどの光が差し込んでいます。
もともと暗い部屋だっただけに、その効果は抜群です。
 
 
 
 
 
大工さんがトップライトの枠を取り付けているところ
ここから見ても、部屋全体に光が広がっているのがわかります。
 
 
 
 
 
 
 
枠を固定したのち、ポリカーボネイト板を取付。
 
 
 
 
 
 
ポリカーボネイト板と既存の防水紙との隙間を防水シートでしっかり塞ぎ
その上に瓦桟を固定してガラス瓦を載せていきます。
 
 
 
 
 
すべての瓦をはめ込んで工事完了。
なんともアナログでローテックな施工法ですが
職人さんの経験と勘所がとても重要であることを実感します。