全国まちづくり会議 in 兵庫

神戸で行われた全国まちづくり会議に
山口県代表として出席してきました。
 
会場は六甲山を望む石屋川沿いに建つ御影公会堂、
アールデコ洋式の印象的な外観が目を引く建物で、
以前にも一度視察に来たことがあります。
 
その後、耐震補強、全面改修を施され、
地域のシンボルとして再生されています。
 
 
 
 
 
会議1日目は24年前に起きた阪神淡路大震災を起点に
その前後に兵庫県が取り組んできたまちづくりの経緯、
市民協働のまちづくりの実践などを聴講。
 
 
 
 
 
震災での経験を経て住民参加によるまちづくりが促進され、
まちづくりの様々な課題を住民と行政が協働で解決していく
仕組みが強化されたことが印象に残りました。
 
 
 
 
 
2日目は未来に向けたまちづくりを具体的に議論。
 
防災・歴史・景観・福祉・空家対策という5つの切り口から
建築士として何ができるか、ワークショップなどを通じて模索しました。
 
 
 
 
 
 
震災により、神戸の歴史的建築物は半減したそうです。
まち並みもその後の再開発によって新旧のモザイク模様になりました。
 
しかし一方で、まちづくりに対する市民の意識は鍛えられ
傷を負いながらも、誇りあるまちを築き続けています。
 
今回の議論や体験を持ち帰り、
自分たちが住むまちのまちづくりに生かすべく
建築士として活動していくことが次の使命になります。
 
 

相生町の家、外構完成

昨年の6月から行われていた住宅の改修工事、
外構部分のフェンスが完成し、工事完了です。
 
茂り過ぎていた庭木や生垣を整理し、
化粧ブロックとアルミフェンスによるすっきりとしたデザインで
敷地境界を引き締めています。
 
 
 
 
ちなみにこちらが工事前。
内部の改修で敷地北(写真奥側)から南側への玄関位置が変わったことに伴い、
駐車場との境界フェンスも一新しています。
 
 
 
 
 
 
アプローチは間口の中央部分に配置し
右側には目隠し効果のある化粧ブロック、
左側には室内への通風を考慮したアルミフェンスで構成しています。
 
 
 
 
今回は敷地境界から玄関までの距離に余裕があったため
正面から2度の曲折りによって視線に変化をもたせたアプローチになっています。
 
 
 

西豊井の家、実施設計へ

昨年の春から設計を進めてきた西豊井の家、
南庭に開けたLDのパースです。
 
南北に細長い敷地形状に対し、建物を北寄りに配置、
隣地から引きを取り、奥の隣地側にカーポート、手前に南庭を確保し
そこから明るい日差しの差し込む居心地のいい空間です。
 
 
 
 
 
 
庭側から見たLDK
 
ダイニングには自宅での仕事ができるワークスペース、
収納量豊富なキッチンカウンターとその奥にキッチン収納。
 
効率的に家事と仕事をこなして、くつろぎの時間が過ごせるような
機能と居心地をバランスさせた落ち着いた空間です。
 
これから見積り調整を経て、実施設計の詰めに入ります。
 
 

人間らしいくらしとは? くらしの豊さとは?

あけましておめでとうございます。

昨年は3年越しのプロジェクトだった秋穂東の家のリノベーションがついに完成、
ITやAIで世の中がどんどんスピーディーに動く時代に
あえて時間をかけてじっくりと家づくりをする貴重な機会をいただきました。
 
これから本格的なAI時代の到来とともに、
私たちの暮らしはさらに便利になり
より快適さを求めて変化し続けていくでしょう。
 
その一方で、人間らしいくらしやくらしの豊さなど
AIではカバーできない領域が必ず影となって現れることでしょう。
 
人間らしいくらしとは、くらしの豊さとは
本来、どんなものなのでしょうか?
 
その本質的な問いを常に意識しながら、
これからの設計に取り組んでいきたいと思います
 
本年もどうぞよろしくお願いします。
 
 

2019.1.5 設計事務所 TIME

何気ない風景@LOGの質感

尾道のLOG、
もともとアパートの共用廊下だった場所です。
 
まったく「インスタ映え」しそうにない何気なさですが
見栄えを競う表現とは対極の、奥深い質感が随所に潜んでいました。
 
 
 
 
 
壁の出隅部分
粗めのモルタルによるザラザラとした質感、
さらに角は丸く削られていて、陰影がとてもやわらかくなっています。
 
 
 
 
 
階段の角や壁との取り合い部分
すべての角という角に丸みが与えられ、面の境界が曖昧になっています。
 
 
 
 
 
樋の落とし口
排水溝、床端部の立ち上がり部分、そして階段
こちらも角の処理は徹底されています。
 
この淡い質感は、
あたかもジョルジュ・スーラの点描のような静謐感を感じさせます。
 
 
 
 
 
スチールの手すり
手すり自体も丸パイプで角もゆるやかに曲げてあります。
 
手すり子のベースになっているフラットバーの角も
丸く削られているのがわかりますか?
 
こんなところにまで一貫した考えが現れていて
設計者による並々ならぬ思いが伝わってきます。
 
パイプの塗料もつや消しで
光は反射ではなく、にじむように物質を映し出します。
 
 
 
 
 
カフェの内部
カウンターは木下地に和紙を貼り、漆で仕上げられているそうです。
その手触りはやわらかく、鉄とは異なる温もりが手に伝わってきます。
 
 
 
 
 
天井の左官仕上げ
職人の指導のもと、スタッフ達で仕上げたそうで
その苦労と込めた思いが濃縮されています。
 
 
 
 
 
土間は左官の掻き落とし
床はそのままベンチにつながり、一体の仕上げになっています。
 
ここにはシャープな造形や派手な表現は存在しません。
 
しかし、
慎重に吟味された質感がコンクリートの建物を包み込んで
静かで奥行きのある空間を成立させています。
 
体験することでしか味わえないこのクオリティ、
時間の流れ方さえ覚醒させてしまうような力を感じます。
 
 

何気ない風景@尾道LOG

尾道にオープンしたLOG
 
昭和38年、千光寺公園の中腹に建てられた山手の先進的なアパートが
このたびリノベーションされ、尾道の町を見下ろす宿やカフェをもち
敷地全体を公園に見立てた、新たな交流の場として誕生しました。
 
2回目は玄関からのアプローチ空間をレポートします。
 
坂を登った踊り場に当たるところにひっそりとした玄関が現れます。
中のアパートは鉄筋コンクリートですが、玄関は意外にも和の雰囲気。
麻紐のような素材を垂らした暖簾が結界をつくっています。
 
銅製の樋がオープンしたばかりの初々しさを感じさせます。
 
 
 
 
 
門の脇にはヒノキ造りのベンチ。
 
階段の踊り場でちょっと一休みできるこの場は
この施設の懐の深さをうかがわせるような存在です。
 
 
 
 
 
門をくぐるとアプローチがまっすぐと奥へ伸びています。
 
突き当たりに見えるのは大家さんの家だったもので
今後、新たな交流の場として改装される予定だそうです。
 
カフェや宿へは、その手前で左に折れてアプローチします。
 
 
 
 
 
最初に現れるのがこの空間
 
正面の壁はピクチャーウィンドウのように切り取られ
それに正対するように中央には丸テーブルが配されています。
そして極め付けは天井にとぐろを巻く設備配管。
 
これらすべてが一体のオブジェのような存在として呼応し
独特の磁場を生み出しています。
 
 
 
 
 
ボイドの空間はおおらかに庭やその先の遠景に抜けきって
何もないはずなのに、決して貧しい空間には感じられません。
 
 
 
 
 
こちらは宿泊棟裏の空き地
 
一見、気の抜けたようなこれらの空間は
隅々までデザインで埋め尽くす高級旅館やホテルの庭とは対極的です。
 
しかし、
ここにはさりげなくも巧みに力を抜いたデザインの妙があり
空間として、デザインとしての余白となって
それが豊かな空間体験につながっているように感じられます。
 
それはまるで、映画「東京物語」で尾道を描いた
小津安二郎の空気感にどことなく通ずるところがあるのかもしれません。
 
 
 
 

何気ない風景@尾道散歩

尾道にオープンしたLOG
2回に分けてレーポートします。
 
まずは、LOGへ至るアプローチから。
 
尾道の商店街から国道を渡ると見える
道路と並行して走る山陽本線の高架をくぐるトンネルは
まるでにじり口のような坂のまちの入口です。
 
 
 
 
 
 
トンネルを抜けると千光寺公園に至る坂が現れます。
道沿いには所々に雑貨やカフェの小店が営まれています。
 
 
 
 
 
メインの坂道には等高線に沿った脇道が幾つかあり
そこにも味のある路地空間が展開しています。
 
 
 
 
こちらにも。
 
細い路地ばかりの迷路のような空間は
イタリヤや南フランスなど、地中海周辺の集落に酷似しています。
 
 
 
 
ときにはこんなものも・・・
 
狛犬ならぬコマネコ?
 
 
 
 
 
坂を見上げるとシュールな刈り込み!
 
もはやオブジェのようですが
以前東京の谷中で見たのとほぼ同じ造形は
まるでデジャヴのよう。
 
 
 
 
 
 
のぼってきた坂を振り返ると
家々の間に尾道のまちと海が見えてきます。
 
平地の少ない地形を生かして発展したまちの風景は
車社会の地方都市とはまったく異なっていて
古くて不便でも、深みのあるくらしの営みが息づいています。
 
さらに、今やその先の未来へ向けて
独自の文化がふつふつと発酵を続けています。
 

何気ない風景@トクヤマの煙突

見事な非対称の構成
 
産業道路を新南陽から東進すると見えてくる(株)トクヤマの煙突。
高度成長期をリアルタイムで生きてきた市民にとっての原風景です。
 
まったく美的考察のされていないはずのこれらですが
仮に利休や織部が今の世に生きていたら、
どのような美を見出すのか、興味が尽きません。
 
 
 

カピンコーヒーにて

小春日和の中、
お客さんとともにカピンコーヒーにお邪魔しました。
 
 
 
 
朝日が差し込むリビング
完成当時から少しずつ設えられた家具とともに共鳴する空間です。
 
 
 
 
天窓からの光に満ちた吹き抜け
完成当時と比べ、少しまろやかになったように感じられます。
 
 
 
 
改修で撤去された天井裏に突き出していた梁の断片たち
空間のアクセントとして生かされたオブジェも役割を果たしています。
 
 
 
 
番付された小屋束
無作為に書かれただけの小さな部材ですが
この家の歴史を伝える大切な存在として息づいています。
 
 
 
 
シルエットが美しいワンシーン
 
改修から6年、
オーナーのセンスによって発酵が進み
ゆるやかに、しかし着実に熟成を深めています。
 
 
 
 
オリジナルのコーヒーとともに
豊かな時間を過ごさせていただきました。
 
この日のためにお時間をいただきありがとうございました。
 
 

HM養成講座、防府 英雲荘にて

防府市の英雲荘で行われた
HM(ヘリテージマネージャー)養成講座に参加しました。
 
英雲荘は江戸時代、毛利家の別邸として建てられた屋敷です。
なかなか質がよいとの噂は聞いていたのですが
その噂に違わず、デザイン、品格、施工の質もかなり高く
防府市によって、大切に維持されています。
 
 
 
 
 
広間は手前の主庭と奥の庭につながる
内外が融合する気持ちのいい空間です。
 
 
 
 
矩折りに曲がる内縁はすべて開閉可能な引戸で
美しい陰影をもった流動性の高い空間です。
 
 
 
 
講座は離れの花月楼にて
なんだか寺子屋の風情です。
 
座学では、防府の文化財行政の動向と山口県東部の文化財について
知識と次代へ生かすための事例などを学びました。
 
 
 
 
午後は実習として花月楼を実測調査、
3〜4人一組で建物の間取りを描き、柱や壁の位置や寸法を実測。
 
 
 
 
調査結果を書き込んだ平面図の一例。
間取り図に対し、縦横の寸法を色分けしたわかりやすいものです。
 
古い建物を生かしていく動きは今後ますます重要度が高まるでしょう。
その上で、今回の実習もとても有益な経験となりました。