トルコ・シリア大地震と日本の現状

先日起こったトルコとシリアの国境沿いでの地震では
亡くなった方が4万人を超えるなど、大きな被害が出ています。
 
NHKのニュースでは、被害が拡大した理由として建物の耐震性とともに
この地域が「地震の空白域」であったことが報じられていました。
 
もともとプレートの境目があるこの地域で
巨大地震が発生したのは500年前以来となるそうです。
 
空白域では、長期にわたりエネルギーが蓄積されるため
巨大地震が起こる可能性が高くなることが以前から指摘されていたそうです。
 
しかし、残念ながら地震対策が十分になされていなかったことが
被害の拡大につながったと考えられます。
 
日本もトルコと同様の地震大国ですが
その日本で地震の切迫度が高まっている活断層が31ヶ所あることが
政府の地震調査研究推進本部から発表されました。
 
 
NHK WEBでもくわしく解説されています。
 
 
 
地震が少なく安全と思っている人が少なくないこの山口県でも
2つの活断層が含まれています。(菊川断層帯と周防灘断層帯)
 
活断層が引き起こす地震の発生確率は1000年単位のため
生きているうちに経験する確率は必ずしも高くはありません。
 
しかし、それが「安全である」という理由にはならないわけで
たまたま、この数百年、幸運だっただけで
地震は明日起こってもおかしくないわけです。
 
果たして自分の住む家や敷地は安全なのでしょうか?
住んでいる地域には津波や土砂崩れの危険性はないのでしょうか?
 
木造の家であれば、
以下のサイトで簡単な耐震性のチェックを行うことができます。
 
 
また、地域の危険性は、
自治体が公開しているハザードマップで確認することができます。
 
地震という自然現象をなくすことはできませんが
地震による災害は、人間の努力次第で減らすことが可能です。
 
まずは、リスクを正しく知ることからはじめて見ませんか。
 
 

カフェプロジェクト スタディ1

診療所をカフェにコンバージョンするプロジェクト
 
客席と厨房のレイアウト1案目をパースでチェック、
元の診療所の間仕切りを撤去し、室内空間の奥行きをいっぱいに使って
広がりのあるスペースを意識した構成です。
 
基本的なレイアウトとしてはまずまずですが
さらにスタディを重ねていきます。
 
 

カフェプロジェクト、スタートしました。

白を基調にしたカフェスペース
 
診療所に使われていたスペースをカフェにコンバージョン、
新たな交流の場をめざすプロジェクトがスタートしました。
 
今後、デザインとともに活用方法も並行してスタディしていきます。
 
 

臼杵の家、新聞掲載

一昨年の秋に完成した大分県の臼杵の家
このたび大分合同新聞の住宅特集にに掲載されました。
 
周南市からは車で約4時間、設計から完成までに2年余り、
長い時間を感じるプロジェクトゆえに、とても思い出深い仕事でした。
 
先日、建築家の磯崎新氏がご逝去されましたが
大分県は礒崎氏の出身地で県内にも幾つかの代表作を残されています。
 
その礒崎氏の薫陶が根付いているせいか
大分県内には建築に対する意識の厚みのようなものを感じます。
 
改めて、彼の地にて設計した建物がこのような形で
取り上げられたことに感慨を覚えます。
 
 

余白のある時間

あけましておめでとうございます
 
令和になって5年目を迎えました。
世界は激しく動揺し、私たちの日常も日々変化を続けています。
 
 
タイムパフォーパンスの略語ですが、
時間あたりの効率や満足度を意味することばです。
 
確かに、自分も動画の倍速視聴をすることが増えた気がします。
忙しい現代社会では、少しでも効率よく情報を得たいものです。
 
それでも
効率や結果を優先することが行き過ぎてしまうと
ただただ時間を消費するばかりで、
心に深く刻まれることは逆に減っていくような気がします。
 
時間の長さは誰にも平等のはずですが
その時間をどのように使うのか、そしてどのように過ごすかによって
結構、人生が変わるような気がします。
 
忙しい現代だからこそ、オルタナティブとしての「時間の価値」があると感じます。
 
 
 
 
 
この写真は、南フランスのフレジュスというまちの広場でのひとときです。
 
詰め込むではなく、ゆったりと過ごす目的のない時間、
それは余白のある時間と言ってもよいでしょう。
 
決して無駄な時間ではなく、豊かな時間。
 
慌ただしく、不穏な日々が続く中でも、
少しでも穏やかに、そしてゆったりと過ごせる、
そんな豊かな時間と場を大切にデザインしていきたいと思います。
 
本年もよろしくお願いします。
 
 

穏やかに過ごせる場の大切さ

令和4年も残り少なくなりました。
今年はどんな一年だったでしょうか?
 
世界な出来事も多い中、建築関係もコロナ禍の混乱によるウッドショックや
戦争による資源高で工事費にも大きな影響が続いています。
 
3月に竣工した大神の家2も木材価格高騰の影響でコスト調整に苦労しました。
現在、設計中の宇部の家のリノベーションも減額調整などで年を越します。
 
それでも、コストを抑えるために「安かろう悪かろう」では後々問題が起こります。
 
限られた費用の中でも何が一番大切なのかをしっかり吟味し
割り切るところは潔く割り切ることを上手にできれば
タイトなコストでも愛着のわく建築を生み出すことは可能です。
 
 
 
 
 
大神の家2も幾つかの要望を割愛しなければいけませんでしたが
「家族がのびのびとおおらかに暮らす」というテーマはぶれることなく実現。
家がまるで公園や広場のように、居心地よく過ごせる空間にこだわりました。
 
 
 
 
 
 
 
周南のまちでも、「車から人へ」の動きが少し垣間見られました。
11月に行われた社会実験では、御幸通りが公園のような豊かな場に。
コロナ禍でも人々がゆったりと交流できる場の大切さが再認識されました。
 
様々な不安の多い現代だからこそ、人と人が孤立するのではなく、
家でもまちでも人と人がつながって穏やかに過ごせる場が大切だと思います。
 
TIMEはそんな場や時間の大切さによりフォーカスして
その価値を提供することにこだわっていきたいと思います。
 

2022.12.28 設計事務所 TIME

藤田美術館

全面ガラス張りの圧倒的な開放感です。
 
大阪では、中之島美術館に続き、もう一つ、美術館に行ってきました。
大阪城にも近い敷地に建つ藤田美術館です。
 
実業家、藤田傳三郎の邸宅にあった蔵を私設美術館にしたものでしたが
老朽化のため、このたび建て替えられてリニューアルオープンしました。
 
国宝9点を収蔵する美術館は、中央の一段高い白いボリュームが展示室と収蔵庫で
その外側に深い庇が伸びる開放的なロビーが広がっています。
 
 
 
 
 
 
道路越しに見たアプローチ
 
道路と敷地を隔てる仰々しい塀や柵はなく
まちに開かれた外観は、まるでモダンなカフェかショップのようです。
 
 
 
 
 
 
建物の側面もガラス張りでまちとダイレクトにつながっています。
 
貴重な美術品は外的環境からしっかり保護した上で
美術館のパブリックな部分は、思い切りまちに開いていて
機能的にも意匠的にもとても明快なデザインになっています。
 
 
 
 
 
 
こちらも敷地と道路の境界には極力高さを抑えた車止めのみで
床レベルがそろえられていてまちとの連続性が強調されています。
 
 
 
 
 
 
道路と反対側には手入れが行き届いた庭園があり、
その先にある邸宅跡の公園につながっています。
 
展示室はロビーとは対照的に自然光を遮り、明るさを抑えた空間ですが
薄暗い展示室を出ると開放的なこの庭園の景色が一気に開けます。
この庭園を見ながら外通路を通ってロビーに戻るという動線になっています。
 
まちに開いたとても小粒の美術館ですが
その空間は、 開 → 閉 → 開 と明快に場面が展開し
美術品のクオリティとともにメリハリの効いた体験を提供してくれます。
 
 
 

何気ない風景@堂島川と高架道路

堂島川に覆いかぶさるように走る阪神高速道路
その裏面に現れた光のゆらぎ
 
水面に差し込んだ日光が反射して無骨な構造物に波紋が表情を与えています。
こんな無機質な巨大構造物にも美を見出すことができます。
 
 
 
 
 
 
 
高架の高速道路は日本の経済成長とともにまちに現れ
ダイナミックな構造物は都市の風景における象徴的な存在です。
 
 
 
 
 
 
一方で、まちの川沿いはほとんど高速道路に占拠されて
まちと川との接点は人間らしい暮らしから遠ざけられてきました。
 
しかし、世界では都市の水辺が人間らしい場として見直され
川を生かした都市づくりが行われています。
 
 
 
 
 
 
ここ中之島でも、川沿いの河川管理通路にイスやテーブル、植栽を配し
川沿いに人の集う場を生み出す取組みが行われています。
 
時は経済の時代から環境の時代へ
 
日本人も経済一辺倒ではなく、
自然のもつ景観やその居心地のよさに価値を見出だし始めています。
 
この場所も大阪府の政策として
水辺を人々の憩いの場に蘇らせる取組みを始めています。
 
まだ緒についたばかりではありますが
少しずつ、まちが人間らしさを取り戻そうとしています。
 
 

中之島美術館 静と動

深い庇がガラス面につくる陰影が美しい
 
中之島美術館、2階エントランス階は全面ガラス張りで
透明感のあるすっきりとしたデザインです。
 
 
 
 
 
 
金属ルーバーの軒天井はそのまま内部まで連続、
目地のラインがきれいにそろっています。
 
無機質な素材の組合せながら、ディテールまで突き詰められ
工事の品質と相まって、洗練された美しさを見せています。
 
 
 
 
 
 
 
ガラス面に映り込むまち並み、
さらにガラスのプリズム効果で虹のような光が加わり
単純なはずのガラス面が多彩な表情を表しています。
 
 
 
 
 
 
室内はパノラマ状に外のまち並みに開いています。
落ち着いたトーンの室内と全面ガラスによる開放感が
気持ちのいい空間を生み出しています。
 
 
 
 
 
 
エントランス階の上部は3層の展示空間で
それがピロティ状の柱で持ち上げられ、宙に浮いています。
 
 
 
 
 
 
展示室につながる2本のエスカレーター
 
奥側のものが行き用で手前側が帰り用、
長く伸びるエスカレーターをゆっくりと進むことによって
ダイナミックな吹抜けを動的な空間体験としてまるごと味わうことができます。
 
 
 
 
 
 
1階から見ると4層吹き抜けの空間に斜めのボリュームがささっていて
インパクトのある造形になっています。
 
 
 
 
 
 
1階階段からの見上げ
 
ストイックでシンプルな外観からは想像できないほど
ダイナミックな中央の吹き抜け空間です。
 
シンプルな外観とダイナミックな室内空間という静と動が見事に構成され
空間デザインからディテールに至るまで納得の力作でした。
 
 

都市の魅力的な公共空間、中之島美術館

大阪の中之島にこの春オープンした中之島美術館
 
堂島川の対岸からは、一見、無表情なブラックボックスに見えますが
都市の公共空間として、また美術館の持つべき性能面などで
様々な工夫が盛り込まれたデザインになっています。
 
 
 
 
 
 
側面の道路から見るとブラックボックスは宙に浮いた存在で
1階はカフェやショップ、2階は美術館のエントランスとなっています。
 
この2層の空間はチケットがなくても誰でも自由に入れる
まちに開かれた場です。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
2階のエントランスは道路から6mほど上がったところにあり
川沿いの道路からは、丘のような公園を上りながらアクセスできます。
 
 
 
 
 
 
通路や階段脇にはあちこちに植栽が植えられていて
まっすぐに上がっていくだけの単調なアプローチではなく
公園をゆっくりと散策するようなアプローチです。
 
 
 
 
 
 
アクセスは階段のほかに緩やかなスロープの選択肢もあり
高齢者や身障者に対しても配慮されています。
 
 
 
 
 
 
ゆるやかな丘には段々状の踊り場がありベンチも備わっているので
川や都市の風景を眺めたり、家族や友人とおしゃべりしたりなど
ゆったりと過ごせる場所になっています。
 
このアプローチは美術館に行くための単なる通路ではなく
都市の中にある公園としてもデザインされているのです。
 
 
 
 
 
 
床は既成コンクリートの細かい平板が石畳風に敷き詰められていて
すべりにくくて排水性もよく、コスト面でもよく考えられています。
 
 
 
 
 
 
散策路脇の植栽との取り合いはスチールプレートの見切りで
植栽の生え際がシンプルですっきりしたデザインです。
 
 
 
 
 
 
エントランスのある2階まで上がってくると
ヤノベケンジのアート作品 SHIP’S CAT が迎えてくれます。
 
作品の周りにもベンチが設けられているので
ここでもゆったりと時間を過ごすことができます。
 
アートや都市の自然に親しむことができる
とてもゆとりのある空間になっています。
 
 
 
 
 
 
 
堂島川に面する側の手すりには10センチほどのカウンターがついていて
まちを眺めながらコーヒーで一服もできそうです。
 
隅々まで細かい配慮がされた、心地よいデザインです。
 
 
 
 
 
 
エントランスレベルには開放的な芝生広場が設けてあり
この日は週末のイベント用の設営がされていました。
 
川に面した芝生広場は美術館の付加価値として
まちとの親和性をとても高めています。
 
この場所は、美術館に来る人にもそうでない人にも開かれていて
都市の公共空間として、とても魅力的なデザインだと感じました。