自然とともにある

禅林寺(永観堂)、総門をくぐり、中門への参道
東山を背景に、新緑のカエデがとても鮮やかです。
 
それにしても広々としたアプローチで
緑あふれるこの空間がとても清々しい気持ちにしてくれます。
 
 
 
 
玄関を抜けると緑あふれる中庭が現れます。
 
これは人の手によって生み出されたいわば「擬似自然」
しかし、その風景は限りなく本物に近く、作為が薄められています。
 
 
 
 
 
 
中庭へ大きく開いた釈迦堂の深い軒と縁側。
 
古来から日本人は生活のそばに自然を引き寄せて暮らしてきました。
そして、ただ単に自然に寄り添うだけでなく、
様々な手を加えて生活文化にまで引き上げてきたのです。
 
日本人が脈々と築いてきた自然とともにあるくらし、
忙しいこの時代だからこそ、その豊かさが深く感じられます。
 
 
 

法然院 参道

法然院、参道入口
 
京都東山の麓に位置する法然院
その参道のデザインは今見てもとても洗練されており、かつ独創的。
俗世界から聖域に導くアプローチの妙を味わうことができるのです。
 
 
 
 
石段は自然石を乱形に敷き詰め、御影石の延石で縁を引き締めています。
リズミカルなパターンは、まるで静かな沢の流れのようで、
俗世の乱れた心を洗い落としてくれるているようです。
 
 
 
 
 
石段を上がるとその先には静かな木立が広がるのみ。
そこにあるのは「無」、ただただ静けさのみが漂います。
 
参道はここで左に折れ、場面が転換、
はやる気持ちを落ち着かせているように長い長い参道を歩かせます。
 
 
 
 
 
左に折れた参道はしばらく木立の中をまっすぐ進みます。
自然の山の斜面を切り裂くように挿入された幾何学的な造形、
静けさの中にも強い意志を感じます。
 
参道の先には再び石段があり、第二の場面転換が行われます。
高低差と角度を振ることで、世界が変わることを強く印象付けています。
 
 
 
 
 
その石段から参道を見返したところ。
矩折りの参道と緩く幅広い石段、調和と対比が見事にバランスしています。
 
 
 
 
 
階段をのぼると、正面に山門が見えてきます。
ぽっかりと四角に開いた山門が風景の焦点をつくり
アプローチのクライマックスを見事に演出しています。
 
参道はここから一直線に山門へ向かい、床の仕上げも砂利敷きに変わっています。
踏みしめる音が加わることで、聖域に向かうことをさらに意識させます。
 
高低差を利用した巧みな場面転換で長いアプローチに抑揚を与え
抑制されたデザインながら、しっかりとした意図が感んじられる空間です。
 
 
 

四君子苑

京都の鴨川沿いに位置する四君子苑。(写真奥、赤レンガ調の建物は北村美術館)
 
昭和の数寄者、北村謹次郎の旧邸と茶苑、そして庭園からなる数寄屋建築の至宝です。
建築を手がけたのは、数寄屋の名棟梁、北村捨次郎
本宅は戦後、進駐軍によって一時接収されましたが
昭和38年、近代数寄屋建築の第一人者、吉田五十八設計によって建て替えられました。
 
 
 
 
 
西向きの表門は軒が低く、ひっそりとした表情です。
道路との間に設けた駒寄せ(木の柵)の格子は間が大きく、高さも低め。
門や塀の高さとのバランスがよく、さりげなく結界をつくっています。
 
この駒寄せがあることで道路との間(ま)を引き締めて、
小さな空間に緊張感と奥行きを生み出しています。
 
 
 
 
土間に配された飛び石。
自然石のかたち、大きさ、色、構成、すべてにクオリティが溢れています。
 
 
 
 
 
入口扉のコンポジション。
上下に杉の中杢、その間に入れた竹格子が洒落てます。
 
 
 
 
左脇の中潜り。
正面大扉より小ぶりに抑え、簡素な表情に徹しています。
 
 
 
 
簡素なデザインながら、真ん中に3本の切込みが入れてあります。
繊細に仕上げたその細工が、節のある丸太の粗野な枠材と対比をなしています。
 
 
 
 
 
右脇壁の照明器具。
両脇を台形にして厚みを減らし
竪格子を入れることでさらに涼しい表情にまとめられています。
 
 
 
 
軒裏は白竹の簀の子貼り、わざと目地から泥土をはみ出させたのも
北村の好みだそうで、細部にわたって心が配られ、趣向があふれています。
 
表門だけでもこれだけのクオリティに満ちているのだから
中はどれだけすごいのだろうと、否が応でも期待が膨らみます。
 
 
 
 
この門をくぐるとめくるめく数寄屋のワンダーランドが待っています。
しかし、写真撮影はご法度なので、残念ながらレポートはここまでです。
 
天下の銘木をふんだんに使い、当代気鋭の大工と建築家、そして庭師が手がけた名作を
何度も何度もため息が出る思いで味わいました。
 
四君子苑は毎年、春と秋に特別公開されています。
あなたも、次の機会に是非、堪能してみてください。
 
北村美術館HP
四君子苑
 
 

新緑の京都

南禅寺近くの無鄰菴。
庭の新緑と流水、そして東山が一体になった美しい風景です。
 
新緑の季節を迎えた京都、
今回は特別公開の四君子苑や美しい庭をもつ建築を視察してきました。
 
 
庭と建築をめぐる新たな気づきやその成り立ちについて
今後、少しずつ紹介していく予定です。
 
 
 

何気ない風景@犬島4

  バラックから。       この廃屋はすでに役目を終えている、 それでもそこには美が存在します。   ひとつひとつの素材は人の欲とは関係なく変化し、 それらに光がにじ … “何気ない風景@犬島4” の続きを読む

 

バラックから。

 

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この廃屋はすでに役目を終えている、

それでもそこには美が存在します。

 

ひとつひとつの素材は人の欲とは関係なく変化し、

それらに光がにじむことによって美が発光します。

 

2011.12.30 設計事務所 TIME

何気ない風景@犬島3

  やぶれかぶれ?       間違いなく廃屋ですが、 その意味をちょっと横へ置いてみると、なかなか趣がある。 外れた板のその先、屋根からもれる光が美を宿らせています。 &nbsp … “何気ない風景@犬島3” の続きを読む

 

やぶれかぶれ?

 

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間違いなく廃屋ですが、

その意味をちょっと横へ置いてみると、なかなか趣がある。

外れた板のその先、屋根からもれる光が美を宿らせています。

 

2011.12.21 設計事務所 TIME

 

何気ない風景@犬島2

  バルコニーに異変。       外観はフツーのプレファブ住宅。 しかし、バルコニーの手すりにつけられたフェイクな腰壁。 まがい物的なデザインは、その意図するところとは違い プレ … “何気ない風景@犬島2” の続きを読む

 

バルコニーに異変。

 

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外観はフツーのプレファブ住宅。

しかし、バルコニーの手すりにつけられたフェイクな腰壁。

まがい物的なデザインは、その意図するところとは違い

プレファブのテイストと調和して妙な心地よさを醸しています。

 

2011.12.13 設計事務所 TIME

何気ない風景@犬島

  一面のクローバー。       直島と共にアートの島となった犬島。 アートのパビリオンもよいですが 脇にあるなにげない自然もまたよし。   2011.12.1 設計事 … “何気ない風景@犬島” の続きを読む

 

一面のクローバー。

 

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直島と共にアートの島となった犬島。

アートのパビリオンもよいですが

脇にあるなにげない自然もまたよし。

 

2011.12.1 設計事務所 TIME

直島ターミナル

  無重力空間。       スレンダーな柱と平らな屋根。 主張しないことを主張するようなSANNA独特のスタイルです。   2011.11.27 設計事務所 TIME … “直島ターミナル” の続きを読む

 

無重力空間。

 

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スレンダーな柱と平らな屋根。

主張しないことを主張するようなSANNA独特のスタイルです。

 

2011.11.27 設計事務所 TIME

 

前川とフォンタナ

  コンクリートのスリット。       前川國男設計の天神山文化プラザ。 まもなく50周年を向かえるこの施設はまだまだ現役です。 質実剛健の前川建築、それにしては珍しい。 ルチオ … “前川とフォンタナ” の続きを読む

 

コンクリートのスリット。

 

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前川國男設計の天神山文化プラザ。

まもなく50周年を向かえるこの施設はまだまだ現役です。

質実剛健の前川建築、それにしては珍しい。

ルチオ・フォンタナのようなスリット、意表をつかれました。

 

2011.11.25 設計事務所 TIME