古民家の実測調査

 

赤褐色の石州瓦が印象的な山間いの古民家
 
右手前に長屋門、左奥に大屋根の主屋が建ち
後方の山を背にした風格ある佇まいです。
 
家主さんのお話では築200年ほどの歴史ある旧家とのことで
今回、建築士会新南陽市部の事業として実測調査を行いました。
 
 
 
 
 
 
正面左脇から見たところ
敷地いっぱいに設けられた石垣と板塀も景観の重要な要素になっています。
 
 
 
 
 
 
南東方向に大きく開口部が設けられた主屋の座敷
 
間口いっぱいの庭とその先の山間の風景に面した座敷は
古民家ならではの風情と開放感のある心地よい空間です。
 
 
 
 
 
 
座敷部分の実測を行っているところ
二間続きの座敷全体で全長や柱間、開口寸法などをチェック。
 
その他の部屋も同様に
一部屋ごとに寸法を測り図面に起こしていきます。
 
地域の歴史としても貴重な民家なので
当時の建築様式とともに資料にまとめることで
今後の保存や活用などに生かすためのデータベースを作成します。
 
 
 

ヘリテージマネージャー実践講座@旧山口電信局舎

ヘリテージマネージャー講座、
今年も座学と実測調査などでスキルアップを図ります。
今回は、山口市の旧山口電信局舎の実測調査を実施。
 
旧山口電信局舎は明治6年頃、
日本の近代化を進める流れの中で建設されました。
 
宝形屋根に下見張りの外壁、鎧戸のついた縦長の窓などで構成され
派手さはないですが、端正な洋館の佇まいを今に残しています。
 
この建物はすでに登録文化財に登録されていますが
関係者のご尽力もあり、売却に伴う解体の危機を逃れ
リノベーションを経て地域資産として再出発する計画があるそうです。
 
 
 
 
 
 
実測調査では当初の意匠を残す応接室から寸法を当たっていきます。
西洋では石を加工して作られることが多い窓枠ですが、こちらは木製で
西洋のオーダーを手本に職人が試行錯誤しながらアレンジしたことが伺えます。
 
 
 
 
 
 
応接室の隣接する和室
こちらはのちに住宅として使用する際に改修されたようで
オリジナルの姿とはかなり違うようです。
 
建物を残しながら住み継いでいくということは
このようなプロセスも現実としては十分あり得ることで
それ許容していくことも必要となります。
 
 
 
 
 
 
和室の外側は生活の都合か、それとも所有者の憧れゆえか
鎧戸から出窓(しかもアルミ既製品)に改変されています。
 
このような途中の改変をどう評価するかは
その時々に関わる人々の感性に委ねられますが
個人的には、建物の由来や歴史、意匠や素材の調和を考慮すると
アルミサッシュの形状と質感は調和という観点から違和感がるため
できるならオリジナルに戻していくことがベターではないかと思います。
 
 
 
 
 
 
当初の建物に増築された部分では
増築の接続部分からの雨漏りが確認されます。
 
建物を後付けする際には、丁寧にデザインと施工をしないと
長く使っていく上では、このようなリスクが発生します。
 
 
 
 
 
 
屋根からの浸水によって床下の湿度が上がり
隣室のたたみにまで影響が出ているようです。
 
木造の建物にとって、雨漏りやシロアリによる被害は致命傷で
長く使っていく上では、根本的な対処が不可欠となります。
 
所有者のお話では
今後のリノベーションではこれらの部分を含め
一旦骨組みまで解体して傷んだところを修繕されるようで
この建物に対する愛着と本気度が強く伝わってきます。
 
 
 
 
 
建物の寿命は、所有者の考え方次第で変わりますが
物理的な寿命は、手入れ次第で人間の寿命よりはるかに長いのです。
 
丁寧にデザインし、しっかりと施工された建物は
地域の景観として人の暮らしに定着して歴史を重ね
その地域に暮らしてきた人々の過去と未来を結びつける大切な存在となるのです。
 
なお、この建物を地域遺産としてまちを盛り上げる企画が
関係者によって10月初旬に行われます。
 
 

ヘリテージマネージャー講座、長門編の1

先週の土曜日に行われたHM講座、
今回は長門市の日置地区の旧家と湯本温泉のエリアリノベーションを視察。
 
午前中は日置地区の旧家を視察、
大正末期に建てられた建物でかなり古いですが、
そこに刻まれたデザインや仕事ぶりから
当時つくった人たちの意気込みを感じ取っていきます。
 
まず最初に見学したのは江戸時代から呉服屋を営んでいた中野家本店の別荘。
敷地には事務所、別宅、離れの浴室の3棟が残っています。
写真は道沿いに建つ洋館の事務所です。
 
 
 
 
道に対し、45度に隅切りされた入口部分。
入口上部には一際目を引く丸い庇が突き出しています。
 
丸い庇の幕板部分には同じく円形の装飾がはめ込まれ
日本建築にはなかった新しいデザイン要素が積極的に使われています。
 
 
 
 
 
 
モールディングの窓枠に縦長の窓。
ちなみに窓枠のモールディングは石ではなく、木を加工して作られています。
窓の桟割りも複雑で、かなり練りこんでデザインされたことが感じられます。
 
 
 
 
 
屋根下には稲妻型の軒蛇腹もつけられ
入口の丸いの庇と対をなすデザインとなっています。
 
これら外観の意匠を見るだけでも
当時新たに入ってきた西洋の様式を積極的に取り入れようとした
デザインに対する意気込みが強く感じられます。
 
文化の中心でなかったこの地方にあって
突然現れたこの洋館は大正末期の当時としては
かなり斬新な風景として見えていたことでしょう。
 
 
 
 
 

ヘリテージマネージャー実践講座@向山文庫

ヘリテージマネージャー講座、
今回は、光市初の図書館として明治19年に建てられた向山文庫にて
実践的な実測調査を行いました。
 
 
 
 
 
正面入口、
風化して文字は読みにくいですが、扁額の字は三条実美によるもの。
全体として、かなり傷みはあるもののなかなか凄みのある表情です。
 
 
 
 
 
台風が接近する前日の残暑が厳しい日中でしたが
みんな汗だくになりながら、手分けして実測調査に入りました。
 
 
 
 
 
入口庇の軒の出、高さ、各部材の断面寸法などを図っていきます。
今回私は、図った寸法を図に起こす係を担当、
測定する係との連携の大変さを痛感しました。
 
 
 
 
 
 
暗い内部も懐中電灯で照らしながら
一つ一つ寸法を当たっていきます。
それにしても大きく曲がった太鼓ばりが秀逸な空間です。
 
 
 
 
 
外壁は、1階が焼杉貼り、2階は土壁仕上げ。
焼杉の一部が開口部(跳ね上げ窓)になっていますが
閉じると外壁と同化するように納められていて、
さりげなくもデザインへのこだわりが見て取れます。
 
 
 
 
 
2階の窓枠も刀掛け(枠を細く見せる納まり)になっていて
小粒で蔵のような、一見何気ない建物に見えますが
なかなかきめの細かいデザイン配慮が見受けられます。
 
 
 
 
 
土壁の表情
風雪にさらされて風化した表情が渋すぎます。
 
簡素ながら深みのある表情や繊細なディテールなどを併せ持ち
このままうち捨てるにはあまりに忍びない、風格のある建築です。
 
 

HM養成講座、防府 英雲荘にて

防府市の英雲荘で行われた
HM(ヘリテージマネージャー)養成講座に参加しました。
 
英雲荘は江戸時代、毛利家の別邸として建てられた屋敷です。
なかなか質がよいとの噂は聞いていたのですが
その噂に違わず、デザイン、品格、施工の質もかなり高く
防府市によって、大切に維持されています。
 
 
 
 
 
広間は手前の主庭と奥の庭につながる
内外が融合する気持ちのいい空間です。
 
 
 
 
矩折りに曲がる内縁はすべて開閉可能な引戸で
美しい陰影をもった流動性の高い空間です。
 
 
 
 
講座は離れの花月楼にて
なんだか寺子屋の風情です。
 
座学では、防府の文化財行政の動向と山口県東部の文化財について
知識と次代へ生かすための事例などを学びました。
 
 
 
 
午後は実習として花月楼を実測調査、
3〜4人一組で建物の間取りを描き、柱や壁の位置や寸法を実測。
 
 
 
 
調査結果を書き込んだ平面図の一例。
間取り図に対し、縦横の寸法を色分けしたわかりやすいものです。
 
古い建物を生かしていく動きは今後ますます重要度が高まるでしょう。
その上で、今回の実習もとても有益な経験となりました。
 
 

ヘリテージマネージャーの役割と工務店の力

山口で行われた今年度のHM養成講座を聴講してきました。
 
今回は長年文化庁で文化財行政に関わり、HMの制度をリードされてきた
工学院大学理事長の後藤治先生による「HMの役割」についての講演です。
 
 
 
 
 
スクラップアンドビルドから循環型社会に移行しつつある日本で
各地域に存在する地域資源を上手に守り、まちづくりに生かす手立てを
改めて詳しく学びました。
 
 
 
 
講演では「まちづくりと家づくり」の関係についてもご教授、
ハウスメーカーとはまた別の選択肢として
地域の工務店によって家づくりをすることによって
地産地消で地域経済の循環を強化できること、
それに付随した新産業の創出の可能性にも触れられました。
 
 
 
 
 
さらに、西日本豪雨や北海道の地震など
災害が起こったあとに欠かせないのが、被害を受けた家の復旧。
 
地元の工務店で作った建物は、その地域のフットワークによって
災害の復旧にも大きく役立つということを中越地震の実例を通して
お話しいただきました。
 
地方のまちづくりにおける工務店の役割について
とても説得力のあるお話です。
 
家づくりを通して自分の地域が元気になり、
万が一の災害においても、貴重な味方となってくれる工務店の力、
改めて見直してみる価値がありそうです。
 
 
 

ヘリテージマネージャー養成講座6

HM養成講座、宇部編
山口大学感性デザイン工学科の内田文雄先生に
「建築が生き続けるということ」というテーマで講演いただきました。
 
 
 
 
 
人口減少に伴う空き家の増加、公共施設の老朽化など
建築を取り巻く様々な問題が浮かび上がる中
質の高い建物を後世に伝え残していくことが課題になっています。
 
建物はまちや人の歴史や記憶を繋いでいく貴重な存在です。
しかし、使われなくなった建物をただ単に保存するには大きなコストを伴います。
そのため、建物を生かし続けて残していく方策が必要になります。
 
講演では、内田先生の実践をもとに
生き続ける建築について、貴重なお話をいただきました。
 
 
 
 
 
講演の後、
重要文化財となった渡辺翁記念館など、建築家、村野藤吾の作品を視察。
 
 
 
 
 
エントランス脇の壁には炭鉱で発展した宇部を象徴する
炭鉱労働者のレリーフが刻まれています。
 
 レトロな雰囲気のエントランスは
映画「ALWAYS 続・三丁目の夕日」のロケにも使われました。
 
 
 
 
 
ロビーから2階天井を見上げたところ
手すり壁、柱、天井の照明形状など
力強さの中にも優美な表情も併せ持つ意匠にまとめられています。
 
 
 
 
 
階段ホール吹抜けのガラスブロック
改修時に新しいものに変わっていますが
複雑な形状が光を乱反射させながらドラマチックに広がっています。
 
 
 
 
 
2階ホワイエの列柱空間
茶色の大理石と磨き込まれたチェック模様の床が華やかです。
 
 
 
 
 
ホール内部を舞台から臨んだところ
村野特有の優美な曲線が多用された空間は、音響的にもすぐれています。
 
 
 
 
 
ホール背面、円弧壁の連続
舞台からの音をこちらで拡散させる効果を意匠とバランスさせています。
 
 
 
 
 
天井の造形とライティング、間接光が優美で美しい。
 
 
 
 
 
照明器具も村野によるオリジナルデザイン
一つ一つ丹念にデザインされています。
 
 
 
 
 
貴賓室の床
4色の人研ぎ仕上げに大理石がはめ込まれたコンポジション
 
村野は随所に装飾的な意匠を施していますが
そこには、建築は合理性だけでなく、人の心に響くものでなければならない
という彼の哲学が深く刻み込まれているように思います。
 
 
 
 
 
回り階段、巾木端部のディテール(丸く盛り上がっている部分)
ほとんど人が気づかないような箇所も
細心の注意を払ってデザインされています。
 
 
全体の空間構成から細部の意匠に至るまで
ひとつとして手を抜くことなく、デザインされたこの建物。
奇跡的に戦災を免れ、その後も市民に愛されながら現役であり続け
これからも長く長く生き続けていくことでしょう。
 

ヘリテージマネージャー養成講座5

HM養成講座、今回は岩国の城下町の取組みを学びました。
 
岩国城は、関ヶ原の合戦以後、毛利氏の国境の守りとして
江戸時代には珍しく山城としてつくられました。
 
しかし、岩国城下の平地が狭いため、
錦川を挟んだ対岸に城下町が整備されました。
 
そして、家臣が錦川を渡って城に通うために錦帯橋がつくられた
など、その成り立ちを初めて知ることができました。
 
 
 
 
 
 
城下町は現在も江戸時代の町割りがあまり崩れることなく残っており
歴史上の町割りの中に、旧家も数多く存在しています。
 
 
 
 
今回、講義ののちに旧家の実測調査の実習を行いました。
5、6人のグループごとに、手分けして建物の各寸法を記録していきます。
 
 
 
 
外部につづき、室内の寸法も計測していきます。
メジャーで長い建物の両端を固定する係、途中の寸法を測る係、
寸法を図面に記入する係など、手分けをして測っていきます。
 
 
 
 
寸法を測りながら、この家の特徴となる意匠や空間もチェック。
この家には、隣家との間に立派な火袋がつくられていました。
 
火袋は、
かまどのある吹抜けの空間で炊事による熱気や煙を上部に逃がし、
火事が起こった際にはこの空間に火を閉じ込めて延焼を防ぐという
古人の知恵が詰まった日本建築固有の空間です。
 
京都の町家にはよく見られるものですが
この岩国のまちの中にその知恵が受け継がれているのは
とても興味深くもあります。
 
 
 
 
実測が終わり、間取りと各寸法を書き出したもの。
(山根建築設計事務所の山根さん作図)
 
 
 
 
こちらは2階に上がる箱階段を図にしたもの
(金子工務店の金子さん作)
いずれも力作です!
 
 
実際に改修を行う際もこのような実測を行い
建物の全容を明らかにすることが求められます。
 
新築に比べて、目に見えない手間がかかりますが
現代ではつくれない価値を将来に受け継ぐための大切な仕事です。
 
 
 
 
今回実測調査に協力いただいた中川家と中川さん。
古くからの家を現在まで大切に守っておられます。
 
HM講座では、この価値を未来にどう活かすか
その活用方法についての模索も学んでいきます。
 
 

ヘリテージマネージャー養成講座4

 
HM養成講座、今回は構造対策について学びました。
 
まず、櫛ヶ浜の家の改修でも構造解析をお願いした
グリーンデザインオフィスの岩田さんから、
改修事例にもとづいた実践的な講義をいただきました。
 
 
 
 
 
特に強調されていたのが、建物の耐震性を考える場合は
上物だけでなく地盤と一緒に考えることの重要性について。
 
櫛ヶ浜の家でもそうでしたが
昔の家は大した基礎がなく、地面の上にそのまま建っているケースが多いのですが
地盤が弱い場合には、その影響を大きく受けてしまいます。
そのため、しっかり踏んばれるように
強固なコンクリートの基礎を設けることが重要になります。
 
 
 
 
午後からは、関西大学の西澤英和教授からの講義。
ここでも、いかに地盤対策が大事かについて神戸の地震をもとに
説明をいただきました。
 
 
 
 
これは、阪神淡路大震災での活断層と被害の集中した地区を示した図。
(赤い破線が活断層、グレーで囲われた範囲が被害集中地域)
 
この図によると
実際に被害が大きかったのは活断層付近ではなく
それより海寄りの軟弱地盤の土地だったそうです。
 
建物被害については
震度の大きさだけでなく、地盤の影響が大きいことがわかります。
 
 
 
 
これは被害が大きかった三宮にある神戸15番館の倒壊した様子。
建物が跡形もなく崩れています。
 
 
 
 
 
15番館の基礎を実測調査すると、
南北方向に455ミリ、また、上下方向に309ミリも動いたそうです。
 
140㎡ほどのさほど大きくない建物でこれほど地盤が動くのだから
建物の強度だけでは、到底大地震にはかなわないということがわかります。
 
私のメモにあるように
いかに地盤の動きを上物(建物)に伝えないようにするかが重要となります。
 
建物の硬さや強さだけでは、必ずしも建物は守れないこと、
建物の構造にふさわしい構造対策を取ることが大事であることが示されました。
 
それが次の動画です。
 
 
 
これはE-ディフェンスで行われた実証実験。
(実物大の建物を実験室内に建てて、地震動を与えてその影響を検証するものです。)
 
耐震性のやや低い在来構法の建物(手前)と長期優良住宅(奥)を同時に揺らしたところ、
強いはずの長期優良住宅が倒壊してしまったのです。
在来構法の建物は揺れの最初に一瞬足元が浮き上がりますが
それによって地震の力を逃がすことによって倒壊が免れたと考えられます。
 
建物の構造対策を考える場合、
建物の硬さや強度などの性能ばかりに目が行きがちですが
木造が本来持っている復元力のある柔軟な構造こそが大事になるそうです。
 
地盤対策と木造の柔軟な構造、
意外と知られていない構造のポイントを学ぶことができました。
このポイントを、今後の設計にもしっかりと活かしていきたいと思います。
 
 
 
 
 

ヘリテージマネージャー養成講座3

 
 
HM養成講座、
土曜日は下関にて近代建築を中心に、歴史遺産について学びました。
 
戦前、海陸交通の要衝として発展した下関には多くの近代建築が建設され、
戦災を免れた建物が今も下関のまちに色どりを与えています。
 
 
 
 
 
こちらは田中絹代ぶんか館。
1934年、旧逓信省下関電信局電話課庁舎として建てられた建物です。
老朽化による解体の危機を市民の保存運動により乗り越え、再生されています。
 
分離派といわれる建築スタイルで
特徴的なパラボラアーチの屋根が当時の逓信省の建築スタイルをよく表しています。
 
 
 
 
 
古典的な柱は庇を貫いて、頂部は切りっぱなしのままに!
理屈を超えた前衛的な表現がとても刺激的です。
 
 
 
 
 
 
それにしてもこの柱、圧倒的なの存在感です。
必要な強度を超えるプロポーションが、デザインの意思を強く表しています。
 
 
 
 
 
 
 
ルネサンス様式の旧下関英国領事館。
保存改修され、現在は市民ギャラリーやカフェレストランとして
市民の拠り所となっています。
 
 
 
 
 
 
そのすぐ近くには、下関南部町郵便局庁舎(左)と旧秋田商会ビル(右)が並んでいます。
 
 
 
 
 
特にこの旧秋田商会ビルはその様式もさることながら
ビルの屋上に緑化された庭園を持っているところが秀逸です。
 
 
 
 
 
1階のホールは洋風スタイル。
柱や梁に施されたモールディング、照明器具など
どれも高いクオリティでデザインされています。
 
 
 
 
 
2、3階は一転して和風のスタイル。
洋館のなかに和の空間が入れ子になった構成が時代の独自性を表します。
 
 
 
 
 
そして屋上には茶室のような座敷が建てられた回遊式庭園、
その時代のユートピアを想像させてくれます。
 
 
 
 
 
左には池もあり、右手のダムウェーター(コンクリートのボックス)で
下階から料理などを運び、特上庭園がサロンのように使われたようです。
 
和洋の混交のみならず、クライアントの創意や文化センスがあふれていて
時代を経た現在も、その強度がこの建物の存在意義を大きく支えています。